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2546. 表現活動の意義

June 12, 2018

遠くの空を覆う幾分濃い雲が、なぜだか風情のある印象を与える。その雲はとても重厚な感じでそこに佇んでいる。

 

時刻は夕方の七時半を迎えた。ここ最近は、夕食後のこの時間帯に必ず日記を書いており、ふと時間を見てそれをここに記していることが多いことに気づく。

 

改めて考えてみると、最初に雲の様子を描写したことや、時刻を確認し、それを明記したことには、自分にとって大切な意味があることに気づく。大抵私は、自分の生活を取り巻く何気ないことから文章を出発させていることに気づく。

 

それが示唆しているのは、いかに私が自分以外の事物に思考や感覚を刺激してもらっているかということであり、いかに自分が自己を取り巻く自然現象と一体になって生活を送っているかということである。

 

日記で書き綴られる思考・感覚・体験の根幹には、この世界で自分を取り巻く他の存在による働きかけが常にある。地に足を着けて生きること、地に足を着けて自己を見つめることの根底には、絶えず自分ではない何ものからかの働きかけに自覚的になっている必要があるのではないかと思う。

 

先ほど、人間の生を豊かにする根幹に想像力と創造力の存在が不可欠であることに気づいた。そこに無いものを想像すること、そしてそこに有るもののさらに奥を想像する力。これが日常をどれだけ彩りあるものに変えてくれるか。

 

想像力の枯渇は、生を単色なものに仕立て上げてしまう。今ここには無いものを創造していくこと、そしてすでにあるものから新たなものを創造していくことが与えてくれる充実感は計り知れない。

 

何かを創造することは、人間の本能的な働きであり、内外世界の絶え間ない創造に参画する手段が個人の創造活動であり、こうした参画が私たちに何とも言えない喜びと充実感をもたらすのではないか。

 

想像することと創造することは、人間要件のうち欠くべからざるものだということを改めて思う。そうしたことを考えていると、少しずつ芸術の意義や表現活動の意義というものが見えてきた。

 

一つには、自己を表現することはこの世界の絶え間ない創造運動に参画することであり、それが私たちに生きる喜びと充実感を与えることを意味するという点である。

 

さらには、この現実世界において、画一化の波が刻一刻と勢力を増しており、固有の自己から生まれるものを何らかの表現手段を用いて形にしていくというのは、画一化の波を食い止める大切な試みであり、それがこの世界の多様性を確保することにつながり得るのではないかと思う。

 

また、そもそも表現活動を行う際に要求されることは、これまで見逃していた自己の側面や世界の側面を見ることであり、ある意味日常を異なる眼差しで見ることであるように思う。見逃していた自己の側面や世界の側面に気づきを与えること、そして日常を異なる目で捉え直すことの意義もまた計り知れない。

 

これまで気づかなかった自己の側面に気づくことは、より深い自己を通じて生きることを可能にする。これまで気づかなかった世界の側面に気づくことは、より深まった世界の中で生きることを可能にする。

 

また、日常を異なる目で捉えることは、日常を一段深い次元で生きることを可能にする。個人の表現活動が芸術という領域にまで昇華されるためには、多くの課題を乗り越え、長大な時間をかけてその実践に育んでいく必要があるが、いかなる人の中にも芸術性の種が存在しており、固有の表現活動によって自己と世界を捉え直す形で日常を深く生きることが可能なのではないかと思う。

 

思考が散逸し始めているが、固有の自己の内側から湧き上がるものを形にすることと世界への関与はつながっており、同時にそれは人生を深く充実したものにしてくれる、という強烈な実感がある。

 

暮れゆく夕日を見ながらそのようなことを考えていた。フローニンゲン:2018/5/10(木)19:58

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