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2430. 【中欧旅行記】五冊の書籍との出会い


ワルシャワ滞在四日目の今日、私はポーランド・ユダヤ人歴史博物館を訪れた。ワルシャワの滞在期間において、今日が最も充実していたかもしれない。

もちろん、二日目にショパン博物館を訪れ、その時に得られた感覚というのは多大なものであり、今もまだ咀嚼中であることは確かだ。しかし、ショパン博物館以上に大きな影響を受けたのが今日足を運んだポーランド・ユダヤ人歴史博物館だったように思う。

私は当初、この博物館は基本的に第二次世界大戦中のポーランドに関する資料が中心に所蔵されているものとばかり思っていた。しかしながら実際には、ポーランド・ユダヤ人の1000年に渡る歴史を示す資料が豊富に展示されており、大変感銘を受けた。

ショパン博物館もテクノロジーを駆使した教育的な配慮が随分となされていたが、こちらの博物館はそれ以上であった。テクノロジーを駆使した展示品の数々からポーランド・ユダヤ人の歴史に関して学んだことがあまりに多く、今はそれら一つ一つをここで紹介することはできない。

博物館の順路に沿っていくにつれてポーランドの歴史が1000年前から現代に向かっていくような作りになっていた。そのため、順路の後半に第二次大戦中のポーランド、とりわけワルシャワに関する資料が数多

く展示されていた。

私が最も多くの時間を過ごした場所はここであり、最も多くのことを考えさせられた場所がここであることに間違いはない。この場所で私が考えていたことは、今後の日記の中で明示的ではないにせよ、必ずその影響が表に出てくるだろうと思われる。

当初の予定では多くても二、三時間ほどをこの博物館で過ごそうと思っていたのだが、実際には三時間以上の時間をこの場所で過ごすことになった。帰り際にギフトショップに立ち寄り、そこで一冊の哲学書と出会った。

その書籍は“Jewish and Polish Philosophy (2013)”というタイトルだ。ポーランド語の書籍ばかりが並ぶ中、この英語の書籍は私の目にすぐに止まった。

中身を覗いてみると、「ウィトゲンシュタインの思考様式は完全にヘブライ的であった」という記述が妙に気になった。この書籍はタイトルにあるように、ユダヤ・ポーランド哲学に関する論文を集めたものである。

書籍を開いて中身を確認した時に、ウィトゲンシュタインの思考様式を取り上げた論文があり、それが非常に興味深く思った。その他にも、マーティン・ブーバー哲学をユダヤ・ポーランド哲学の文脈から捉えている論文などが私の関心を引き、この書籍を迷わず購入した。

おそらくこうした機会でなければ、この書籍を購入することはなかったのではないかと思われ、またこの機会を逃してしまっては、ユダヤ・ポーランド哲学に触れることなく今後の人生を送ってしまうことになると思われた。

本書を購入後、宿泊先のホテルに帰る前に、世界遺産に登録されている旧市街を歩いた。ここを歩いた時、オランダにはない雰囲気を即座に感じた。

残念ながら第二次大戦中にこの場所のほとんどの建造物は破壊されてしまい、今たたずんでいる建造物は新たに建てられたものだ。それでもこの場所から歴史の重みを感じることができたのはなぜなのだろうか、と考えていた。

再建された建物を眺めながら、歴史の重みは物質に宿るのではなく、精神に宿るからなのではないかと即座に思った。今目の前に建っている建物は戦争後に建て直されたものである。

戦争前の様子にできるだけ近づけようと尽力した市民たちの精神の中に、すでにワルシャワの長大な歴史が宿っていたに違いない。そのため、新たな物質として建物が作り直されても、このようにして歴史の重みを感じさせる空間が醸成されているのだ、と思わずにはいられなかった。

旧市街の石畳でできた道を歩きながら、歴史の重みとそれに付随する固有の感覚質について考えていた。すると偶然、一軒の書店の前で私は思わず足を止めた。

「英語の書籍も置いています」と英語で書かれた看板に目が止まった。書店の窓際に面陳列された書籍をガラス越しに眺めてみると、「この書店には何か自分にとって大切な書籍がありそうだ」と直感的に感じた。

ホテルにすぐに戻って日記を綴ろうとしていたため一瞬躊躇したが、意を決して直感に従う形でその書店に足を踏み入れた。この直感が正しかったことにすぐに気づいた。

私はその書店の哲学書コーナーで四冊の書籍を購入した。一冊は「無の思想」に関するものであり、二冊は「存在と非存在」に関する書籍であり、最後の一冊は「物語としての哲学」と評していいような一般向けの思想書だ。

まさか今の自分の関心に合致する哲学書を四冊もワルシャワで購入できるとは思ってもみなかった。正直なところ、哲学書コーナーに足を踏み入れた時、私は美学に関する書籍を探していた。

結果として美学に関するめぼしい書籍を見つけることができなかったのだが、その代わりに上記の四冊と出会うという幸運に恵まれた。それらの書籍を購入して改めて気づいたが、やはり私は哲学への関心が強いのだということだった。

また、それらの書籍を購入することによって、改めて自分は東洋思想と西洋思想の双方から「無」や「存在」を探究することに対して強い関心を持っているのだと分かった。明日からはブダペストを訪れるが、旅の隙間時間にはぜひとも今日購入した書籍を読み進めたい。

ワルシャワで出会うことのできたこの五冊の書籍は今後の私の人生を深めてくれるものになるだろう。ワルシャワ:2018/4/16(月)17:59 

No.974:The Tiny Glitter of A Grayish City

I was meditating upon the tiny glitter of a grayish city for a short while.

Even though the city is covered with grayness, we can find an intrinsic sparkle everywhere. Groningen, 09:10, Monday, 5/7/2018

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