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2426. 【中欧旅行記】ワルシャワ国立美術館を訪問して


ワルシャワ滞在の三日目の今日は、ワルシャワ国立美術館に足を運んだ。午前中からこの美術館を訪れ、半日ほどそこで過ごした。

ポーランドの中でも最大級の美術館ということもあり、所蔵品の数が多く、全てを見て回るのには半日ほどの時間が必要であった。それでも全ての作品を丹念に見たというわけではなく、やはり自分に響く作品の前で足を止め、そうした作品とゆっくり向き合うようにしていた。

こうした形で美術品の鑑賞を行っている自分を見ると、学術論文や専門書を読んでいる自分とほぼ同じことを行っているように思えた。つまり、論文や専門書を読む際にも、一文一文丁寧に最初から最後まで読んでいくことなどほとんどなく、やはり自分の関心を引く箇所を中心に文献と向き合うという姿勢は芸術作品の鑑賞においても見られるということだ。

論文や専門書を最初から最後まで一字一句追いかけて読むというのは、学習効果がとても低く、仮に最後まで読めたとしても、その頃には最初に読んだ内容がほとんど記憶にないのではないかと思われる。読むべき箇所を時間をかけて読み、繰り返し文献と向き合うことがその内容理解を助けてくれるのと同様に、芸術作品も自分を捉えて離さないような作品だけに時間をかけて向き合うという姿勢の方が意味があるように思える。

全ての文献が自分の関心を引くわけではないのと同様に、全ての芸術作品が自分の関心を引くわけではないのだ。その時の自分の関心や、はたまた自分の内面の成熟度に応じて響くものとそうでないものがあってしかるべきである。そうしたことを館内を歩きながら考えていた。

館内の所蔵品の中で最も関心を引いたのは、特別展示のコーナーだった。ポーランドのピアニスト兼作曲家でもあったイグナツィ・パデレフスキ(1860-1941)に関する特別企画が催されており、そこに所蔵されている数々の品に私は最も強い関心を示した。

パデレフスキは多産な作曲家ではなかったが、とりわけ彼が作曲した楽譜に私は関心を示した。今日この美術館を訪れるまでパデレフスキのことを知らなかったため、これも何かの縁かと思う。

パデレフスキの経歴で非常にユニークなのは、一旦ピアノ演奏から退き、政治家となって初代ポーランドの首相になったことである。このような音楽家がいたことに私は驚き、所蔵されている一つ一つの品々を興味深く眺めていった。

パデレフスキに関する特別企画に時間をかけ、その後にその他のコーナーの芸術作品を鑑賞していった。欧州の美術館を訪れる時にいつも思うのは、中世の宗教画を理解するのは非常に難しいということである。

そこで描かれている世界観とは異なる文化で育ったこともあってか、知的な理解が可能であっても、自分の芯に響いてくるようなものはほとんどない。そうした自分を見るにつけ、自分が真に欧州の文化を理解する日はもっとずっと先のことになるように思えた。

美術館を後にした私は、時間がまだ早かったこともあり、昨日訪れたショパン博物館の方向に向かって散策に出かけた。博物館の直ぐ近くにショパン音楽大学があり、その脇を通った時にピアノを練習している音が聞こえてきた。

音楽室の窓が開いていたためか、春のワルシャワの心地良い風に乗って、ピアノの美しい音色が聞こえてきた。私はしばらくその音色に耳を傾けながら、校舎の近くをゆっくり歩いていた。

今日は本当にうららかな日曜日である。ワルシャワで過ごす今日という一日が、人生における重要な意味に満ち溢れ、とても貴重な一日であったということを有り難く思う。ワルシャワ:2018/4/15(日)16:17 

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