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2400. この世界との融和


心身の調子がすこぶる良い。何かまた一つの結界のようなものが崩壊し、内側から爆発を伴うような力強いエネルギーが渦巻いている。自己の存在が弾けとび、この世界全体の中に溶け込んでしまいそうだ。

自己が爆発することは自己の消滅を意味するのではなく、自己の核は依然として明晰に存在している。ただし、その核そのものも極めて純化されていき、それがこの宇宙全体と融和していくかのような感覚なのだ。

「それは何のようですか?」と問われれば、答えに窮するが、それは今聞こえてくる小鳥の鳴き声そのものであり、目の前に見えるつぼみが出始めた木々だと言える。別の表現で言えば、先ほど食べたインドネシア料理のようだとも言えるし、今書斎で流れてくるバッハのようだとも言える。

それら全ての中に自己が溶け出していて、だからこそ自己はそれら全てなのだ。そのように説明すればとても分かりやすいだろう。

こうした現象を見るにつけ、おそらく私はまた何か一つの変容体験を通過したのだと思う。それを引き起こしたのは、長く厳しい冬の時代であったことは言うまでもない。

確かに欧州で迎える二回目の冬は、一年目の冬に比べると大きな障害は無かったように思える。しかし意識の水面下では、依然として過酷な厳しさが存在していたことを疑うことはできない。

そうした長い冬の時代を経て今の自分がある。そして、この自分はもうこの全体としての世界の中に溶け出してしまいそうなのだ。

今朝方、春のメリーゴーランドは変動性と移り気が激しいと思っていた。確かにこれまでは上下左右に揺れ動くような季節の移り変わりを経験していた。

今、ようやくそのメリーゴーランドは緩やかな揺れを伴いながらも安定して動き出した。そんなメリーゴーランドに乗りながら、日々のライフワークを少しずつ前に進めていきたいと思う。

今日はこれから午後の仕事に取り掛かる前に、作曲実践を行いたい。日々作曲実践に従事する傍ら、やはり自分の内側に、作曲技術の発達過程の研究を行いたいという気持ちが日増しに強くなっていることに気づく。

これまでは、主に企業社会や学校教育の文脈に関係した発達現象を探究していたが、ここからはそこに音楽の世界における発達現象の探究を本格的に組み込んでいきたい。とりわけ、作曲理論の理解度に関する階層的複雑性と作品そのものが持つ階層的複雑性のそれぞれの発達プロセスとメカニズム、そして両者の関係性を研究していきたい。

階層的複雑性というのは、マイケル・コモンズやセオ・ドーソンが提唱した概念であり、古くはカート・フィッシャーが明らかにした発達の普遍的な特性のことを指す。それが言語的な領域であれ、非言語的な領域であれ、いかなる発達現象にも階層的複雑性という質的差異の構造的進化を見て取ることができる。

階層的複雑性という一つの概念を基礎に起き、まずは作曲理論と作曲技術の様々な領域における独自の発達特性を調査していきたい。というのも、階層的複雑性というのは、あくまでも全ての発達領域に存在する骨組みのようなものであり、それは決して肉ではない。

そのため、個別具体的な領域の発達プロセスとメカニズムを明らかにするためには、ある意味その骨組みへの肉のつき方を一つ一つ丁寧に観察していく必要がある。例えば今関心を寄せているのは、転調とハーモニーという二つの領域を取ってみたときに、それぞれの領域に対する理解度の発達速度の差を見ていくことなどが挙がられる。

さらには、理解度と実際の作品におけるそれらの知識の活用度合いの複雑性を比較してみるというのも非常に興味深い。まだ何も先行研究を調べていないが、作曲に関する各領域には固有の発達プロセスがあり、領域固有の知識の理解度にせよ、その適用力にせよ、まだほとんど解明されていないのではないかと思う。

これまでいくつもの作曲理論を眺めてみたが、それらは領域固有の知識を紹介することにとどまり、発達プロセスを考慮したテキスト体系になっていないことに気づく。これはおそらく作曲に関する初学者であるからこそ気付けることなのかもしれない。

仮にこの数年以内に博士課程に進学することになれば、音楽の世界における発達現象を取り上げたいと思う。これまで取り組んでいた領域とは全く異なる領域の中で発達現象を探究していく。

ここからは頭の片隅で、博士課程で研究するに価する大きなテーマ設定を考え、いくつか小さい研究テーマを立てていこうと思う。二つ目以降の博士課程においても、自分が最も研究したいと思うテーマを探究していく。

それがこれまでの自分がいた領域と全く異なっていても関係ない。むしろ異なっていればいるほどに望ましい。究極的に異なるものは、結局一つの究極的な地点に向かっていくのだから。

これからの探究がより深く充実したものであり続けることを静かに願う。フローニンゲン:2018/4/10(火)14:17 

No.960: Augmenting Expectation

I realize that all of the things in my life restart again. A tranquil expectation is augmenting and pulsating inside of myself. Groningen, 09:16, Saturday, 4/28/2018

 
 
 

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