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2021. 芸術能力の高度化について

January 20, 2018

ハワード・ガードナーの “The Arts and Human Development (1973)”という書籍は大変得るものが多かった。今から45年ほど前に執筆されたとは思えないほどに、本書の記述の大部分は色褪せていない。

 

本書の中でも最も関心のある箇所から順次読み進めていき、随所に書き込みを行った。現在のガードナーは芸術と人間発達にそれほど関心を持っていないのかもしれないが、本書に書かれている事柄に関していくつか実際に質問をしてみたいことが多々あった。

 

ガードナーは、ロバート・キーガンやカート・フィッシャーに並ぶ発達心理学の大家であるが、私はこれまでそれほどガードナーの仕事には関心を払ってこなかったように思う。実際に、私がガードナーの書籍を読み始めたのはオランダに来てからである。

 

昨年、フローニンゲンの街の古書店でガードナーの書籍を見つけ、それを購入して以降、少しずつガードナーのこれまでの仕事を参照するようになった。

 

確かにガードナーは、ピアジェの流れを汲む発達心理学者であり、構造的な発達理論に造詣が深いのだが、どうも多重知性理論のイメージが先行していたために、これまではあまり彼の仕事に関心を持つことはなかった。

 

だが、ここ最近になって、とりわけ本書をきっかけに、ガードナーの仕事には大変感銘を受けるものが多いことに気づき始めている。特に本書の主題でもある、芸術と人間発達というのは、まさに今の私を捉えて離さないものであるがゆえに、今後はガードナーの仕事をより丹念に参照することになるだろう。

 

優先的に読むべき箇所を本日全て読み終えたため、明日からは読み飛ばしている箇所を含めて再読を行いたい。

初読の際にいくつもの示唆を得たのだが、本日読んだ箇所の中で最も印象に残っているのは、芸術における発達プロセスを説明する際に、ピアジェの段階モデルはそれほど適したものではない、という記述だった。

 

この記述に対してハッとするものがあった。確かに、知性の発達と芸術の能力の発達というのは関係性があるだろうが、優れた芸術家に果たして形式操作段階——あるいは後形式操作段階——の思考がどれほど必要だろうか、という疑問は以前からあった。

 

芸術の能力というのは、ピアジェのモデルでいうところの高度な段階特性、つまり論理を司る能力にそれほど依存することなく発揮されるケースは多分に見受けられる。優れた画家や優れた演奏家が高度な形式論理思考を持っているとは限らず、下手をすると、それほど高度な思考形態を保持していない可能性の方が高い。

 

そのようなことを考えてみると、芸術の能力をピアジェの段階モデルで説明しようとするのはかなり乱暴だと言える。ただし、ピアジェの理論の核にある「階層的複雑性」という概念は、芸術の能力の発達にも十分適用可能だと思う。

 

階層的複雑性とは、対象となる能力や知性が発達すればするほどに、当該対象領域の能力や知性の複雑性が増すという現象である。これは芸術の能力においても当てはまる現象だと思う。

 

というのも、芸術の能力は高度な論理思考を発揮する必要はそれほどなくても、高度なシンボル操作能力を発揮することが要求されており、それは芸術家の能力の高まりと共により複雑なシンボル操作を可能とするものに変容していく、というプロセスを見ることができるからである。

 

複雑なシンボル操作とは、より抽象的なシンボルを操作できると捉えたらいいだろう。例えば、一見すると複雑には見えない後期ピカソの絵画作品などは、高度に抽象化されたシンボル操作の末に生み出されたものである。

 

そのようなことを考えていると、やはり芸術の能力をピアジェの理論を用いて、とりわけ形式論理思考や後形式論理思考の枠組みで捉えようとすることには無理があるように思えてくる。

 

ガードナーは本書を通じて、絵画、詩、音楽などの様々な領域の具体例を示しながら、芸術の能力の核には、そうした論理思考というよりも、イメージを司ることにより適したシンボル操作の能力があるということを指摘している。

 

芸術家が発揮する高度な能力は、言語を司る論理思考に単純に還元することはできないが、ガードナーも指摘するように、身体感覚とも密接に結びついた複雑なシンボルを操作する能力の発達的産物と捉えることならできそうだ。

 

今後は本書をさらに深く読み込むことと並行して、自分の実践領域である作曲と照らし合わせながら、芸術の能力の高度化について考察を深めていきたい。フローニンゲン:2018/1/17(水)20:59 

No.656: Melodies as the Life of Music


I realized again the importance of melodies in music. 

 

Melodies are absolutely the life of music. 

 

I have to horn my skills to create beautiful melodies. Groningen, 21:50, Tuesday, 1/16/2018

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