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1995. 夢の中の夢の世界へ


小鳥のさえずる声が聞こえる。時刻は早朝の五時半に近づきつつある。

辺りは漆黒の闇に包まれているが、こうした景色はもはや日常と化しているように思える。そうした闇の世界の中で一人活動を始める自分もまた、日常的な光景の一つに過ぎない。

今朝は起床する際に、頭の中で何かを考え続けていた。それはやはり文章と曲を作ることに関するものであった。

そこではまた新しい考えが浮かんでいたが、それを頭の中で念仏を唱えるように繰り返すばかりであったため、今となってはそれが何であったかを覚えていない形で、それは自分の内側のどこかにしまわれているような感覚がする。

そうした思念が生み出される直前、私は夢を見ていた。前職時代のオフィスらしき場所で働いている夢である。

私はあるところまで仕事を済ませた後、自分の机の上で音楽関係の書籍を開き始めた。多くの人たちはまだ働いている人が多かったが、ちょうど私が書籍を読み始めた頃に、周りの人たちも少しずつ仕事の手を止めて各自の好きなことに取り組み始めた。

その様子を私は背中で感じ取っていた。しばらく書籍を読み進めていると、どこからともなく音楽が聞こえてきた。

音楽が聞こえる方を見ると、それは私の元同僚と上司が奏でる音楽であった。彼らの方を見ると、手元にあるパソコンから音楽が流れていることがわかった。

その音楽は心地よくも不快でもない。何か感情が動かされるわけでは決してなく、単に音が流れているということだけを認知させるような音楽だった。

その音の流れを気にかけないようにするかのごとく、私は引き続き手元の書籍を読み始めた。すると今度は、私の席からは随分離れた後方から、二人の男性の話し声が聞こえてきた。

その話し声はフロア中に響き渡るほど大きなものであった。だが、どのような内容の話かは私の席からはわからない。

二人の男性が時折笑いながら大きな声で話していることだけがわかる。先ほどの音の流れとは異なり、二人の声は読書の妨げとなり、幾分不快感を引き起こした。

すると私は書物を机の上に置き、そこで仮眠を取り始めた。どれほど仮眠を取っただろうか。

意識が眠りの意識へと向かっていく最中に、二人の男性の声はもはや聞こえなくなっていた。私は眠りの意識の中にすとんと落ち、しばらく夢の世界の中にいた。

夢の中の夢の世界に落ちていく自分。仮眠から覚めた時の自分はまだ夢の世界の中にいるということは、どこか不思議な感じがしないだろうか。

夢から覚めたと思ってもそれはまだ夢の世界の中にいるのである。仮眠中の私は一切の夢を見ていなかった。

幸か不幸か、仮眠中に夢を見ていなかったということは、仮眠から覚めた世界がまだ夢の中であるということを気づかせてくれた。私は机に伏した頭を上げ、辺りを見渡してみると、オフィスには自分以外の人は誰もいなかった。

その時の時刻はまだ夜の八時あたりだったと思う。おおよその時刻を触知した瞬間に、私は夢から覚めた。 今日も昨日と同様に、いつもと変わらなぬ変わった一日を過ごすことになるだろう。今日から、アーノルド・ショーンバーグの “Fundamentals of Musical Composition (1967)”を最初から丁寧に読み進めたい。

それと合わせて、メロディーに関する書籍を読み進めていく。今はまた作曲理論の基礎を固めることに意識を向ける。

フーガ、ハーモニー、転調などのトピックは一旦脇に置き、何はともあれメロディーの創出方法に探究の焦点を当てていくことが賢明だと昨日思った。今日もまた、日常と化した目の前の闇と同様の日常を生きることになるだろう。フローニンゲン:2018/1/11(木)05:48 No.630: Blend with Memory and Present Feelings

It seems to happen that mysterious music occurs within me, blending with my present feelings and one of the unforgettable songs in my memory. Groningen:07:19, Thursday, 1/11/2018

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