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1330. 父からの手紙と遥か彼方の場所に向かって


今日からいよいよ『成人発達理論による能力の成長』の出版記念ゼミナールが開始となる。全六回にわたる今回のゼミナールを私自身もとても楽しみにしていた。

今回はこれまで以上に多様な受講生の方々に恵まれ、当日のクラスの中でのやり取りが非常に楽しみである。また、本書を取り上げるのは今回のゼミナールが最初で最後であるため、思い入れも強い。ゼミナールの開始はあと一時間半後だ。 書斎の窓から外の景色を眺めると、今日はどうやら雨らしい。現在は曇りであるが、その雲の色や形を見れば雨が降るであろうことを容易に想像させる。

通りに植えられた木々が、いつもよりも強い風にざわざわと揺さぶられている。そのような景色を眺めながら、私は昨夜の夢を思い返していた。

昨夜の私は、極めて局所的な夢を見ていたように思う。言い換えると、今の自分の記憶に残っているのはたった一つの夢の場面だけである。それは時間としてはとても短かった。

夢見の意識から覚醒意識に移行する直前、私は夢の中で父から一通の手紙を受け取っていた。その手紙の文章の一つ一つが、父の肉声を伴ってありありと知覚されるような夢だった。

父の手紙にあったのは、私に関する「全ての肯定」だった。そこに記載されていた内容は、私の現在の歩みに関する全面的な肯定だけがあった。

探究項目に関する共感、探究に打ち込む姿勢、生き方に関する全ての肯定だけがそこに記載されていた。人はこのように、別の人間を心底肯定することができるのだということを、父の手紙から教えられた。

何より、私は父の手紙の内容に大きな励ましを受けていた。手紙の文字を一文一文目で追うごとに、父の肉声が喚起される。言葉には書き手の全てが宿るのだ。人格も知識も経験も、そして思いも。

それら、私たちが固有に持つ全てのものが言葉に宿るのだということ。これも一つ、父の手紙から得られた大事な教えであった。

手紙を読み終え、私は大切にそれを折りたたんだ。折りたたまれた手紙とは対照的に、私の全ては外側に向かって開かれていた。それは大きな何かに向かって歩いていこうとする開放感だった。

そこで私は静かに目を覚ました。時刻を確認すると、時計の針は六時半を示しており、いつもより随分と遅い起床時間であることに気づいた。

今日からゼミナールが開講されるということもあり、少しばかり昨夜は興奮状態にあったため、寝付くのが遅かったのかもしれない。いずれにせよ、今日からまた新しい一日が始まったのだという確信と、今日もまた一つ新たな歩みを進めていくという気概に満ちた確信を得た。

一日一日が、いつものように、そしていつもと異なる新たな日であるように、私の日々が遥か彼方の場所に向かって積み重なっていく。2017/7/22(土)

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