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1247. I型人財からT型人財への育成に関するローテーション問題


昨夜はいつもより早く就寝をしたおかげもあり、早朝の思考の有り様がここ数日のものとは異なることに気づく。それは文章を書いている時に明確に現れており、一つの機械が淡々と動いていくかのような非人工的な運動を自分の思考の中に見て取ることができる。

一人の人間の思考というのは、間違いなく開かれたシステムだと思うのだが、今日の自分の思考は、閉じられたシステムのように思える。機械論的な世界の中で、閉じられたシステムが一つの動作から次の動作へと、論理的必然性を持って動いていくような思考がこの瞬間の自分を支配しているようだ。

このような自分の有り様に関しては、いつものように一切の価値判断を入れず、「そのような日であり、そのような朝なのだ」という言葉を述べたくなる自分がいる。その点については普段と変わらない。 ふと、先週末に行われた、インテグラルジャパン代表の鈴木さんとの出版記念対談について思い返していた。その対談の前に、少しばかり雑談として、近年、日本の企業社会の人財開発の中では、ローテーションの問題が浮上しているとのことであった。

具体的には、I型人財からT型人財への成長を支援する上で、どのタイミングで他の領域の経験を積ませるのかという問題である。また、最近では、一つの専門性を持ち、幅の広い知識を獲得しているT型人財から、二つ以上の専門性を持っている「π型(パイ型)」人財を育てる必要性も顕在化しているようだ。

ここで問題となるのは、一つの専門性を確立しようとする人が、他の領域に移行する時期があまりに早い場合、I型人財にもなることができず、そのタイミングを測定することが難しいという論点である。この問題に対する方策の一つはまさに、能力の専門性度合いを的確に測定することにあるだろう。

これは私がマサチューセッツ州にある研究機関レクティカに在籍していた時に、そこに在籍している研究者との話を通じ、また実際に研究データを眺めてみた時にわかったことだが、一つの専門性領域を確立し、その能力を実務の中で発揮できるようになるためには、その領域の能力レベルが少なくとも11を超えていなければならないということだった。

レベル11(システム構築レベル)の説明については、拙書『成人発達理論による能力の成長』に譲るが、この能力レベルを客観的な基準として、専門性の確立の有無を判断していくことは有益に思われる。ただし、レベル11というのは専門性の土台が確立された段階にすぎないため、ここで他の領域にローテションをしてしまうことは問題がある。

レベル11に到達した段階でローテションをかけられてしまった場合、その専門領域の発想の枠組みや方法に縛られ、他の領域の関係者と相互理解を図りながら真の意味での協働作業をしていくことが難しい。その結果として、幅広い知識と経験を獲得することができず、T型人財に変容していくことは起こりにくいだろう。

これは若干細い指標だが、ローテションをかけるべきタイミングは、その人が自分の専門領域の能力レベルを11.5あたりにまで伸ばした時であろう。このレベルに至れば、レベル12(メタシステム構築レベル)の特性の一つである、自分の専門領域の発想の枠組みや方法の限界に自覚的であり、他の領域の発想の枠組みや方法を積極的に取り入れようとするあり方が芽生える。

こうした特性はまさに、一つの専門領域から離れ、幅広い知識と経験を確立し、他の専門領域の関係者と協働する上で重要になるだろう。上記の論理を用いれば、客観的な基準をもとに、T型人財からπ型人財へ育ったか否かの判断を行うこともできるだろう。

ここで簡単に紹介したことを実務の世界で実現させていくには、少なくとも1-2年ほどの時間がかかるだろう。というのも、上記のような判断は、決して360度評価のような、印象に左右されやすく、能力の質的差異を捉えることのない測定手法に依存してはならず、客観的なアセスメントを開発しなければならないからである。

これまでの経験上、専門性の能力レベルを測定するためのアセスメント開発には、データの収集と分析や関係当事者との協働作業などを含めると、やはり1-2年ほどの時間がかかるだろう。だが、ローテーションの問題を解決し、長期的な視野を持って人財育成を行うのであれば、こうした1-2年の労力はあってしかるべきものだと思う。2017/7/2

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