1237. 人や組織の成長と複雑性科学


早朝の仕事に取り掛かろうとしたところ、昨日読んでいた、ステファン・グアステロ教授の “Chaos, Catastrophe, and Human Affairs: Applications of Nonlinear Dynamics to Work, Organizations, and Social Evolution (1995)”の書籍を読んで書き残していたメモが目に入り、それについて少しばかりまとまった文章を書き残しておく必要があると思った。

まずは、私たちの器や能力の成長が起こる時に生じる「自己組織化」という現象についてである。この現象については、これまでの日記で書き留めているので、ここで詳しく説明しないが、それは器や能力を構成する要素が相互作用をなし、これまでよりも一段次元の高い構造を自律的に生み出す現象を指す。

グアステロ教授の書籍に大変興味深い指摘があり、それをもとにすると、知識や経験という構成要素に対する自己組織化は、それらの知識や経験を比喩的に捉え直した時に生じやすいと言える。メタファー(比喩)というのは、私がジョン・エフ・ケネディ大学に在籍していた五年前から関心のあるトピックであり、特にメタファーの仕組みとそれが与える精神作用について関心があった。

当時は、言語学者のジョージ・レイコフの書籍をよく読み、彼のメタファー理論について探究をしている時期があった。そのようなことを思い出しながら、改めて、メタファーが持つ力は多大なものがあるように思う。

自らの知識と経験を比喩的に捉えるというのは、間違いなく私たちに対して、それらを対象化させることを促し、さらには他の事象との類似点や相違点を考えることを促す。そして、それらを一つの新たなメタファーとしてまとめ上げることは、自己組織化のプロセスと似たものが確かにある。

もう一つ、グアステロ教授の指摘で興味深かったのは、「創造的なシステムはカオスの縁(ふち)に存在する」というものである。カオスの縁というのは、カオスと秩序の境界領域のことを指す。

個人や組織を一つのダイナミックシステムと見立てれば、それは安定的な状態からカオスの状態を経て、再び安定的な状態に至りながら成長を遂げていく姿を見て取ることができるだろう。まさに、人や組織の成長プロセスには、必ずカオスと秩序が伴う。

そのように考えてみると、絶えず成長する人や組織というのは、常にカオスの縁に存在しながら、自己そのものに適度な揺らぎをもたらすことができるのではないかと思う。つまり、絶えず成長する人や組織は、カオスとカオスではない境目に存在しながら、安定性と不安定性の均衡状態の中で、活動を進めていくという特徴を持っているのではないだろうか。

その時、重要なのは、グアステロ教授が指摘しているように、システムのフィードバック機能が外部環境に対して開かれており、絶えず環境と相互作用をなしているということだろう。

絶えず成長する人や組織は、間違いなく、自らを取り巻く環境に対して開放性を維持し、外部からの情報フィードバックを受け、さらに自らが外部に働きかけていくという双方向のフィードバック関係を形成するという特徴があるように思える。

人や組織が一つのオープンシステムとして存在し、外部環境と相互作用をなす必要性については、昨日に書き留めていた情報エントロピーの増大と関係しているだろう。システムの質的成長には、情報エントロピーの増大が不可欠である。

情報エントロピーの増大をもたらすのはまさに、システムを取り巻く外部との絶え間ざる情報のやり取りなのだと思う。メタファー、自己組織化、カオスの縁、情報エントロピー、オープンシステム、相互的フィードバックなどの概念をもとに、人や組織の成長を捉えてみると、まだまだ新しいことが見えてきそうである。2017/6/30

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