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1235. 能力の統合化と差異化について:ダイナミックシステム理論の観点より


日本の梅雨と共鳴現象を起こしているのだろうか。フローニンゲンもこの一週間は天候が冴えない。

こちらの雨はずっと降り続けるようなものではなく、降ったり止んだりが続くような断続的な性質を持っている。また、体感としてじめじめした感じはなく、むしろ朝夕は依然として寒いぐらいである。

ここ数日は断続的な雨に見舞われることを事前に知っていたため、ランニングに出かけることもできず、自宅の書斎で探究活動に絶えず打ち込んでいた。先日、四日分の食料を購入し、その期間は家から一歩も出なかった。 今日は午前中と夕方に、三月のザルツブルグでの学会でお世話になったステファン・グアステロ教授の “Chaos, Catastrophe, and Human Affairs: Applications of Nonlinear Dynamics to Work, Organizations, and Social Evolution (1995)”を読んでいた。

この書籍は、産業組織心理学や経営学の旧態依然とした発想の枠組みや研究方法を見直すことに関して、優れた洞察を私たちに与えてくれるだろう。本書を一気に読み進める中で、私は多くの刺激を得たように思う。

それらの刺激については、この数日間のうちに書き留めておきたいと思う。ここで一つ書き留めておきたいのは、拙書『成人発達理論による能力の成長』で紹介した、能力の「統合化」という概念は、ダイナミックシステム理論の観点から捉えると、システムの挙動がバイファケーション地点に到達することだとみなすことができるだろう。

バイファケーション地点というのは、日本語では「分岐点」と訳される。ここでなぜ、能力の統合化が「分岐点」に到達することと同じなのかというと、拙書の中で説明したように、能力の統合化は常に「差異化」を伴うものだからである。

複数の能力が統合されるに際して、差異化が伴うというのは不思議に思うかもしれないが、私たちは、複数の能力がより高度な一つの全体にまとめ上げられる時、その全体を構成している能力そのものもより高度なものに変容する。

複数の能力が統合されながらも、その全体を構成するサブ能力自体が高度なものに変容されるがゆえに、それはサブ能力の特性が増すという差異化を必ず伴う。それでは、能力という一つのシステムがバイファケーション地点に向かい、その能力を構成するサブ能力そのものも高度になる理由は一体なんだろうか?

その問いに対して、グアステロ教授の書籍の中にヒントが隠されていた。端的には、それが起こるのは、システム内の情報エントロピーを減少させるためなのだ。

システムは停滞期から質的な成長を遂げる瞬間に向けて、情報エントロピーを拡大させていく傾向があることがわかっている。つまり、そのシステムが突きつけられる情報の絶対量が増加し、システムの構造上、その情報量に耐えきれなくなった時、システムは変容を迎える。

ここで述べている情報というのは、私たちの能力を一つのシステムと見立てた場合、知識や経験のことを指す。システムは、エントロピーを増大させていく過程では非常に不安定だが、ひとたびバイファケーション地点に到達すると、安定的な状態になる。

システムに対してこうした安定的な状態をもたらすのがまさに、差異化によるエントロピーの減少だと言えるだろう。要するに、システム全体がさらに高度な段階に至るという統合化を果たし、それに付随して、サブ能力すらも高度化することによって、これまでのシステム構造では扱いきれなかった知識や経験などの情報エントロピーは、高度になったサブ能力に担われることによって拡散されるのだ。

これによって、全体としてのシステムは、情報に押しつぶされることなく安定的な状態を獲得する。この現象の副産物として、能力全体が高度な段階に到達すると、その能力を活用した応用範囲が広がるということが起きる。

これはまさに、システム全体が高度化することによって安定的な状態を獲得し、サブ能力の高度化によってもたらされる。

要約すると、能力という一つのシステムがバイファケーション地点に向かい、その能力を構成するサブ能力そのものも高度になる理由は、システム全体の不安定性を解消するためであり、それは情報エントロピーを減少させるためだと言い換えることができる。2017/6/29

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