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1122. 時代精神と作品


書き留めておきたい想念のようなものが絶えず頭の片隅にあるような感覚。それらの一つ一つを認識の光に照らしてみたとしても、それらは一向に消えるような気配を見せない。

むしろ、それらに認識の光を当てれば当てるほど、私の内側に書き留めておきたいと思わせる想念が湧き上がってくるかのようである。今日は早朝から、「タレントアセスメント」のコースで課題となっている論文を四本ほど読んだ。

これは既に一読済みのものであり、二読目の今日は、それらの論文の内容をワードにまとめることを行っていた。「人間発達」という根幹のテーマを探究するために、相も変わらず多様な領域の論文や専門書と毎日向き合っている。

そうした多様な領域の中でも、やはり自分の関心を引く度合いというものが異なっていることに気づく。発達測定の開発に関する理論や発達測定の普及に関する思想の探究は、私にとって大きな関心事項であることに偽りはないが、心理統計学の論文は内容的にも思想的・方法論的な観点からも少々退屈である、というのが正直な感想だ。

今日もそうした思いを持ちながら論文に向き合っていた。 一昨日辺りに、井筒俊彦先生の全集を読みながら考えていた「テキストの読み」について再び考えを巡らせていた。学術論文にせよ、専門書にせよ、同一の作品であったとしても、読者によって異なる意味を汲み取るということの不思議さに改めて思考を向けていた。

「人々は同一の対象から異なる意味を汲み取る」というのは、発達理論においては何ら驚くに値しない考え方なのだが、これはどちらかというと対象と向き合う方の個人にベクトルを当てた考え方だろう。

確かに、私たちは各人異なる認識の枠組みを持っており、同一の対象から異なる意味を汲み取る。また、その認識の枠組みは、置かれている状況などによって変化が生じるゆえに、同一の対象と向き合う時刻や環境が異なれば、私たちはまたそこで異なる意味を汲み取ることになるのだ。

それはそれとして非常に興味深い事柄である。一方で、対象を見る私たちではなく、対象そのものには何が起こっているのだろうか?あるいは、対象そのものにどのような性質があるがゆえに、私たちは異なる意味を汲み取り得るのだろうか?そのような問いかけが頭の中を走った。

フランスの哲学者ロラン・バルトは、対象物、特に芸術作品とは、様々なものが編み込まれた織物のようなものであり、その織物を紐解いていていくのは私たち自身であると述べる。バルトのその指摘を思い出した時、やはり対象物にはそもそも重層的な意味が織り込まれているに違いないと思った。

学術論文一つをとってみても、それは非常に錯綜とした意味の産物である。論文から意味を汲み取ろうとするのは私だが、そもそも無限の意味がその論文の中に埋め込まれているのも確かなのだろう、という考えが湧いてきた。

そして論文の中に梱包されている意味は、社会の文化的枠組みや時代精神の変遷に応じて、絶えず変化をし続ける。私たち読者が変化することによって、作品から汲み取れる意味が変化するだけではなく、作品そのものにも変化する固有の意味が備わっている気がしてならない。

「時代に耐えうる作品」という言葉が暗示するように、作品そのもののが時代精神と相互作用し、絶えず変化を遂げているような印象を私は受けるのである。そして、時代に耐えうる作品は、絶えず意味を変化させながらも、普遍的な意味がそこに内包されたものなのだと思う。2017/5/31

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