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1109. 先人の固有性を感得すること


季節という一つの巨大なダイナミックシステムが非線形的な変化を遂げ、フローニンゲンの街にも新たな季節が突然やってきた。春を通り越して初夏を思わせるような日曜日であった。

早朝から終始一貫して晴天に恵まれ、書斎の窓から広がる景色は夏の様相を呈していた。季節が変わろうとも、仮に世間が今日という日を日曜日とみなそうとも、私は自分の探究活動に毎日邁進するだけである。

以前の日記で書き留めておいたように、もはや自分が行う探究は自己本位の探究という性格を逸し、常に社会へ基軸を置いたものに変貌を遂げつつある。自己への奉仕と社会への奉仕とが同一のものになり始めているのだ。

午前中、まずは “Complexity Theory and The Philosophy of Education (2008)”の続きの章を一つ読んだ。今日読み進めていたのは、哲学者のミシェル・フーコーの哲学思想と複雑性科学の発想との接点である。

昨日、教育哲学者のジョン・デューイが複雑性科学の思想を深い次元で持っていたことに関する気づきを得た。今朝の読書を通じて、それと同様に、フーコーも複雑性科学の思想を持っていたことに気づかされた。

フーコーの哲学書に関しても、一昨年に日本で購入していたにもかかわらず、まだほとんど手がつけられていない。しかし、デューイと同様にフーコーも、複雑性科学という私の核となる関心事項を結節点として非常に近しい存在になり始めている。

この夏私は、デューイのみならず、フーコーの思想体系にも分け入って行くことになるだろう。フーコーの思想と複雑性科学との関係性に関する論文を読み終えた後、私は修士論文のドラフトの完成に向けて作業を始めた。

幸いにも、午後にドラフトが完成し、早速論文アドバイザーのサスキア・クネン教授にドラフトを提出した。同時に、次回のミーティングで話し合うテーマとして、一つ相談事を持ちかけた。

それは、この修士論文をもとに査読付き論文を執筆した際に、どのジャーナルに投稿するのが良いかというものだ。

実際には、それよりも重要な問題として、その査読付き論文を科学者のみならず多くの実務家が読めるように、近年普及し始めているオンラインジャーナルに投稿した方がいいのか、今後の学術世界での活動を考えた際に、権威のあるジャーナルに投稿した方がいいのか、その辺りについて次回のミーティングでクネン先生の意見を伺おうと思う。 先生へのメールを送信した後、私は休憩として、ベートーヴェンのピアノソナタに関する解説書を読み始めた。それを読みながら、作曲にあたってまずは、「ベートーヴェン的なもの」「モーツァルト的なもの」「バッハ的なもの」「ショパン的なもの」というように、過去の偉大な作曲家の固有性を感得していくことが大事だと思った。

作曲を通じて、自分の固有性を見出す前に、必ず過去の偉人の固有性を掴んでおかなければ深みに到達することはできないように思う。過去の偉人が精進と継承の末に築き上げてきた音楽体系を深く理解しなければ、自分が納得するものを生み出すことはできないことを知る。

現在は、ベートーヴェンの楽譜を自分の手で忠実に再現するということを行っているが、これと同様のことを、その他の偉大な作曲家に対しても徹底的に行うべきだろう。偉人が構築した各人固有の音楽体系を参照する中で、自分独自の音楽体系を少しずつ構築していくのだ。

そのようなことを考えてみると、このプロセスは学術論文の執筆と何ら変わることがないことを知る。学術論文を執筆する際に、自分がそれを執筆しなければならないという強烈な思いと同時に、それを具現化させる際には、必ず先人の仕事を参照することが必要なのだ。

先人が長い年月をかけて築き上げてきた体系のその上に、自分の表現したいものを積み上げていくのである。自己の独自性を見出し、それを意味のある形で表現するためには、先人が残した体系を汲み尽くすことから始めなければならない。2017/5/28

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