1093. 日本の思想と日本語


昨日は、オランダ人の友人であるピーターとランチを共にした。「タレントアセスメント」のクラスが終了した後、このコースの課題について意見交換をすることも合わせて、キャンパス近くのレストランに向かった。

このコースは私が普段足を運ぶ社会科学キャンパスで行われているのではなく、街の中心部から少し東にある別のキャンパスで行われている。このコースを受講するまで、私はそのキャンパスに足を運んだことがなかったため、キャンパスに行くための途中の道はいつも私にとって新鮮だ。

昨日の朝はとても爽やかであり、20分ほどのウォーキングは非常にすがすがしい気分を私にもたらしてくれたのを覚えている。クラス終了後にピーターと訪れたレストランは、フローニンゲン近郊の農家から食材を仕入れ、それらを元にしたオーガニック料理を提供してくれることが特徴的だ。

私たちは、注文を済ませるよりも先に、課題について意見交換を始めた。今回の課題は、ルーワーデンにあるホテルマネジメントスクールの入学審査に関して、その学校が現在用いている各種のアセスメントの質を評価し、改善策を提示するというものである。

ピーターがまず自分の考えを述べ始めたので、彼の話を聞くことに専念していた。ピーターは若干独特な形と音を持つ英語を比較的早口で話すので、ピーターの英語に脳を調節するためにいつも少々の時間を要する。

ピーターが考えている論文の構成案を理解し、特に改善策について面白いと思ったところで注文した料理が運ばれた。その後も食事をしながら課題について意見交換を続けていた。

意見交換がひと段落すると、自然と様々な話題に会話が移った。ピーターは現在発達心理学の修士課程に在籍しており、プログラム終了後は、フローニンゲン大学の研究者養成用の修士課程——これはオランダに特有の制度であり、博士課程に入るための登竜門のようなプログラム——に進む予定だったが、アムステルダムにいったん戻り、そこで仕事を探すらしい。

将来的には博士課程に進む意志があるとのことであった。私もピーターと同じく研究者養成用の修士課程に進むことを考えたが、その道を通らなくてもフローニンゲン大学で博士課程のポジションが得られる可能性が開けてきたため、結局、実証的教育学のプログラムに進むことにした。

少しばかりお互いの今後について話をしたところで、今度は話題が日本のことに移った。以前紹介したように、ピーターはお茶に関するソムリエであり、昨年はオランダで最優秀ソムリエに選出されている。

ピーターのお茶に関する造詣は非常に深く、お茶を通じて見える日本の新たな側面をいつもピーターから学んでいる。先々週のクラスの時、ピーターが台湾産のお茶を持ってきてくれ、持参した陶器に注いでお茶を出してくれた。

真後ろの席にいたドイツ人の友人であるフランとインドネシア人のタタが、クラス開始前に教室の最前列でお茶を飲むピーターと私に呆れ笑いをしていた姿が思い出された。日本を取り巻くお茶産業に関する話をピーターから聞いたところで、「日本のどのような点が最も好きか?」という唐突な質問がピーターから投げかけられた。

とっさに出てきたのは、「日本の思想」という答えだった。 ピーター:「それは神道や儒教的な思想のこと?あるいは禅仏教のような思想のこと?でも、一部にはキリスト教の思想も入ってるよね?」 :「確かに、それらも日本の思想を形作っているものなんだけど、自分が尊重しているのはそうした思想区分で括られるような日本の思想ではなく、もっと深層的なものなんだ」 ピーター:「より深層的なもの?」 :「そうだね。今話しながら思ったのは、どうやら自分は日本の思想そのものを尊重しているというよりも、そうした思想が育まれる日本語そのものに敬意を払っていることがわかったよ。特に、自分は日本語が生み出す独特の意味世界や感情世界を尊重しているように思う」 ピーターから投げかけられた「日本のどのような点が最も好きか?」という問いに対して、思わぬ回答が出てきたことに自分でも驚かされた。日本を再び離れることによって、日本の思想がいかに独特なものであり、それがいかに日本人の生活に浸透しているかについて、改めて考えを巡らすことが日増しに強くなっている。

日本人の精神生活を規定する日本の思想というのは、ピーターの言うように、確かに様々な思想が混在したものであるがゆえに掴みどころがないことは確かである。しかし、私たちの目には見えないところで日本の思想というのは紛れもなく存在している。

こうした日本の思想への関心が高まることに応じて、そもそもそうした思想を育む母体としての日本語に強い関心を私は持ち始めているようだった。これは欧州での生活を始めて以降、自分の内側で静かに進行していた関心であり、日本語が持つ意味世界や感情世界の固有性というテーマは、日本語を母国語として持つ私にとって避けては通れないものだった。

ランチが終わり、レストランを後にした私は、このテーマが自分の想像以上に重要だという思いに包まれていた。2017/5/25

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