1092. 二ヶ月半の休暇に向けて


夕食を終え、一息ついたところで再び仕事に取りかかった。具体的には、「成人発達とキャリアディベロップメント」のコースで課せられている論文を執筆し始めた。

この論文を執筆するにあたり、私は昨日、論文アドバイザーのサスキア・クネン教授にインタビューを行っていた。先生に何をインタビューしていたかというと、科学者のキャリアにおいて、大学を移ることが科学者のアイデンティティとスキルにどのような影響を及ぼすのかを尋ねていた。

クネン先生は、フローニンゲン大学で博士号を取得後、ユトレヒト大学に移り、そこで助教授としての職を得ることによって科学者としてのキャリアをスタートさせたそうだ。当時のオランダにおいて、博士課程に在籍している者は、日本と同じように、博士課程の「学生」とみなされていたようだ。

現在のオランダでは、博士課程に在籍している者は「学生」ではなく、給料の支払われる「従業員(研究者)」として扱われる。先生の話によれば、学生からいきなり助教授になったことに伴い、最初はアイデンティティの形成に苦労があったそうだ。

先生からあれこれと科学者としてのこれまでの歩みを聞いているうちに、やはりフローニンゲン大学の研究環境は非常に優れているように思えた。先生も述べていたように、特にダイナミックシステムアプローチや非線形ダイナミクスを発達研究に応用することに関しては、フローニンゲン大学は世界的に見てもメッカである。

また、研究者に多くの自由裁量権を与えていることもフローニンゲン大学の特徴であり、自由に研究に打ち込める環境は私にとってとても魅力的に映る。そうしたことからも、フローニンゲン大学で博士号を取得する可能性は依然として私の中で高く、仮に米国で博士号を取得することになったとしても、ポスドクや助教授としてフローニンゲン大学にまた戻ってきたいと強く思う。

ダイナミックシステムアプローチを発達科学に応用する領域を切り開いたのは、クネン先生の共同研究者であり、なおかつ博士課程時代の先生のアドバイザーでもあったポール・ヴァン・ギアート教授である。ヴァン・ギアート教授とクネン先生が、今から30年以上も前から現在にかけてこの領域を探究していることに対して、改めて多大な敬意を払った。

一つの領域をこれだけ長く探究し続けることは、そう簡単にできることではない。この道の第一人者に師事できることを有り難く思った。

先生にインタビューをしている最中、人間の発達に関して私が非常に広範囲の関心事項を持っていることは、今後の研究の内容をより豊かにしていくために不可欠なことなのだと思った。

関心領域についてここで改めて列挙しないが、それらが非常に多岐にわたっていることは確かであり、その領域の広さから、なかなか一つ一つの領域を深めていくことができないことに対して時に焦る気持ちがあった。

しかしながら、全くもって焦りを感じる必要などなく、いかに関心領域が広かろうが、その時その時において、一つ一つの領域と真摯に向き合うことが何より大切なのだと思う。一年目のプログラムが終了すれば、およそ二ヶ月半ほどの休みの期間に入る。

ここで私は、現在自分が関心を持っている領域の中でも、特に関心の強い領域に絞って、できる限り多くの論文と専門書を読むことに時間を充てたいと思う。最優先すべきは、ダイナミックシステムアプローチを活用した発達研究領域、非線形ダイナミクスを活用した発達研究領域、MOOC等のオンライン学習に関する研究領域であり、この夏の期間に、各々の領域についてそれぞれ100本ほどの論文に目を通しておきたい。

そうすれば、基礎的な知識基盤が確立され、それらの領域に関する言語を今とは異なる次元で扱えるようになるだろう。この夏の二ヶ月半は、ノルウェー旅行を挟みながらも、とにかく自分の関心分野の言語力を高めることに専心したいと思う。2017/5/24

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