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1091. 感動の本源:5羽の鳥の家族より

June 3, 2017

フローニンゲンの街の中心部から自宅に戻っている最中に、とある運河の水面に2羽の鳥が浮かんでいるのが見えた。近寄ってよくよく見てみると、2羽の鳥は草や土で作られた足場の上に立っており、1羽の鳥の足元には3羽ほどの小さなひな鳥がいた。

 

それらの小さな小鳥を発見した瞬間に、この5羽の鳥は一つの家族なのだと理解した。ひな鳥は顔の前方が赤く、親鳥の顔の前方は白かった。

 

帰宅してから取り掛かるべき仕事があったため、そのまま素通りしようと思ったが、横目に入ったその家族の行動が愛らしいものに思え、しばらくそこに立って観察をしていた。

 

1羽の鳥と3羽の小鳥が立っている足場は完全に泥で作られたものであり、もう1羽が立っている足場は、中がくり抜かれた四角形の窓板のようなものの上に枝や草が敷かれる形で作られたものだった。鳥の外見から性別を区別するのは難しいが、安定した土の上に立ち、足元に小鳥を保護している方が母親だろう。

 

一方、まだ完成していない枝や草が敷かれた方の上に立っていたのが父親だろう。しばらく観察をしていると、この鳥の家族が面白い行動をいくつか見せはじめた。

 

観察を始めてからすぐに、父鳥が運河のあちこちに出かけて行き、せっせと枝や大きな葉っぱやらを集め始めたのだ。運河の上に浮かんだ枝の中で、足場用に使える枝をしっかりと吟味しながら選んでいるように見えた。

 

実際に、父鳥は小さな枝や折れそうな枝には目もくれず、足場用に使えるしっかりとした素材の枝を運河から集めていることがわかった。枝を口にくわえては、巣に戻り、すぐさま別の枝を探しに運河に戻っていく後ろ姿は、まさに父親の背中であった。

その間、運河に浮かぶ土の塊の上に立っている母鳥は、ピヨピヨと鳴くひな鳥たちに口移しで食べ物を与えているようだった。こうした観察を続けているうちに、もう暫く様子を見届けようと思い、私は運河沿いに在るベンチに腰掛けてさらに観察を続けた。

 

再び父鳥に目をやってみると、相変わらず運河の上をウロウロしながら枝や葉っぱを探している。すると突然、父鳥が海面に潜り始めた。

 

運河の底に沈んでいるより重たい枝を発見したり、あるいは小鳥に与える餌を捕まえているようだった。運河の底から重たい枝を発見した際には、せっせと建築中の巣の方にその枝を運び、母鳥や小鳥に挨拶をするような仕草をしたり、時には家族に目をくれることなく、再び仕事に戻っていく姿に妙に打たれるものがあった。

 

母鳥がひな鳥を見守る姿と父鳥の働く姿を見て、この家族の生き方の中に全てのことが含まれているように思えて仕方なかった。そこには、「育む」ことと「作る」ことの本質があった。

 

最小単位の社会の中に、常に育むことと作ることが関係しており、動物も人間もその点においては全く等しいのだと思った。動物のそれの方がより原始的であるがゆえに、育むことと作ることの純粋性がそこに現れているように思えた。

 

その純粋性に触れた瞬間に、私は感動の気持ちに包まれた。ベンチに腰掛けながら私が熱心にその鳥の家族を見ていたからだろうか、運河を囲むある一軒の家に住む老父婦がベランダから顔を出し、鳥の様子を写真に撮り始めた。

 

また、スーパーから帰ってくる最中の二人の主婦が同じくその場に立ち止まり、鳥の家族についてあれこれと会話を交わしながら、その様子を笑顔で眺めていた。やはり、ここに何か重要なことが隠されているのだと思わずにはいられなかった。

 

私たちがその場で立ち止まり、この鳥の家族を眺めることを促した「それ」に気づかなければならない。「それ」こそが、私たちに様々なことを考えさせ、様々なことを感じさせ、様々なことを教えるのだ。

 

その「それ」を見逃して生きてはならない。私たちに立ち止まらせることを促す「それ」は、生きることの本源であり、感動の本源のように思える。

 

その場を後にすることを決心した私の内側は、感動で満たされていた。2017/5/24

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