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974. 日記が持つ秘術と顕術


——あなたは日記をつけていますか?——ラルフ・ワルド・エマーソンからヘンリー・デイヴィッド・ソローへ 早朝から日記を書き続けている。昨日は、午前中の数時間を除き、残る時間は全て、自分が執筆した書籍の初校を読み続けていたのであるから、文章を書きたいという衝動が湧き上がるのも無理はないのかもしれない。

昨日もいつもと変わらないほどの量の日記を書き残していたように思うのだが、今朝は無性に日記を書き留めておきたいという力が私の背中を押している。書籍を執筆することを通じて学ばされたことは、数かぎりない。

その中でも、書籍が持つ形式でしか伝えられないことと書籍という形式では伝えられないことの双方があることに気づかされる。特に、一般に流通する書籍を出版する場合、多くの人に理解してもらえるような内容と文章表現にしていく必要があるのはいうまでもない。

前回の作品に続き、今回の作品においても、その点を絶えず意識しながら文章を執筆することによって多くの気づきがあった。多くの人に理解してもらえるような内容を取り上げ、さらにそれらを分かりやすい文章にしていく作業を通じて、執筆者である私自身の対象に対する理解がより明瞭になり、自分の中で理解がさらに進んだことは間違いない。

一方で、一般に流通される書籍の形式では語ることのできない内容と表現方法があることに対しても、歴然として痛感させられた。やはり私にとっては、書籍の形式を通じて表現できない内容と方法を代替するものが日記という形式なのだ、ということに改めて気付かされた。

もちろん日記のみならず、学術論文という形式もわたしにとって非常に重要な表現手段である。それら三つは、表現方法が異なり、必然的にそこで表現される内容も姿を変えることになる。

私の中で最優先されるべきものは学術論文の執筆だと思うが、それでも日記を執筆し続け、書籍を執筆するということも絶えず継続させていきたい。それら全ては、開示されるものが全く異なるからだ。

開示されるものの相違が一つに収斂される日が来るまで、それら三つの表現形式で言葉を形にすることを続けたい。 昨日もふと、日記の持つ意義について改めて考えていた。そのきっかけを生んだのは、米国の思想家ラルフ・ワルド・エマーソンの何気ない言葉だった。

エマーソンが弟子でもあり友でもあったヘンリー・デイヴィッド・ソローに対して、「あなたは日記をつけていますか?」と尋ねたエピソードが脳裏をよぎったのだ。ソローは、この問いかけをきっかけとして日記の持つ意味に目覚め、実際に日記を書き始めた。

そして、ソローが一生涯にわたって随筆を執筆し続けることができた背景には、日記を書き続けたことが大きく関係していた、という史実が残されている。ソローは絶えず日記を書くことを通じて、随筆を書き続けたのだ。

このエピソードから、私は改めて、日記には内側の流れを循環させるような作用があるに違いないと思うようになった。そして、日記を執筆することは、内側の循環の流れを促すのみならず、内側から何かを外側に創造するための力を呼び覚ます作用があるに違いないのだ。

これは疑いようのない事実として私に経験されている。ソローに対して問いかけを投げかけたエマーソン自身、生涯にわたって日記を書き続けていた。

思想家でもあったエマーソンが書き残した日記は、一つの文学作品として今もなお多くの人に読まれ続けている。エマーソンにせよ、ソローにせよ、そして森有正先生や辻邦生先生のように、自分の内側にある固有の現象を外側に表現することによって、普遍的なものに昇華させていくことを希求した人物たちは、例外なく日記を書き続けていた。

日記を執筆することは、固有性と普遍性を架橋する唯一の媒体手段なのかもしれない、と思わずにはいられない。現在の私は、固有性を普遍性に昇華させていくことの前段階、もしくは前々段階にあり、日記という表現手段に没入している状態だ。

つまり、普遍的なものに至るために日記を執筆しているわけではないのだ。自分の内側にある思念や感覚を言葉にしなければ日々を生きていけないがゆえに、日記を書き残しているにすぎない。

彼らのような偉人が日記と向き合ったような形で、私は日記という表現手段と向き合えていないことを知っている。だが、それでも日記を書くことを私は辞めないだろう。

日記という表現手段は、内側の循環を促し、内側からの創造を呼び覚ます力を持っていることを知ってしまったからだ。2017/4/23

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