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950. ベートーヴェンのピアノソナタの発達研究に向けて


昨日は久しぶりに夜更かしをしてしまった。一年目のプログラムが終了した後に、ベートーヴェンのピアノソナタに関する構造分析を非線形ダイナミクスやダイナミックシステムアプローチの手法を用いながら行ってみたいという思いが一気に吹き上げた。

一つの楽曲というのは、開始から終わりにかけて「発達」していく。おそらく「発展」という言葉の方がふさわしいのかもしれない。しかし、私はあえて「発達」という言葉を用いたい。

両者の言葉はともに、英語では “development”と表現されるのだが、私が発達心理学を専門としていることに多分に影響を受け、一つの曲は発展していくというよりも発達していくという方が私の語感に忠実な気がしている。

というのも、一つの楽曲は、発展という言葉が示唆するような勢いの増加や量的な拡張が単純に起こっているわけではなく、人間の発達過程と同様に、質的な差異を常に内包しながら、浮き沈みを伴う形で曲の最後に向かって運動を続けていく、と考えているからである。

端的に述べると、一つの楽曲には、絶えず構造的な差異が存在しており、それは曲の進行に合わせて時に上昇し、時に停滞や下降を伴う生物の発達過程と瓜二つであるように私には思える。そこでは、単純に勢いが増加しているわけでもなく、また、単純に何かが栄えていくわけでもない。

そのため、「発展」という言葉が持つ語感よりも、質的な差異の浮き沈みを伴う「発達」という言葉が持つ語感の方が私にはふさわしいように思える。さらには、より大きな観点で見ると、ベートーヴェンが書き残したピアノソナタの全作品が、あたかも人間の発達と同様に、質的な差異の変遷を伴う多様な発達過程を持っているように思えて仕方ないのだ。

ピアノソナタ全作品を一つの全体を持つ生き物と捉えた場合、それは勢いが増しているわけでも、何かが盛んになっているわけでもない。しかし、そこには成熟への歩みがあるのだ。

ベートーヴェンが最初に生み出したピアノソナタから、最後に残したピアノソナタに向かって、様々な紆余曲折を経ながら、質的に深いものに変容していく姿が見られるのではないだろうか。ウィーンで訪れたベートーヴェン記念館の印象が私の中で強烈に残っており、ベートーヴェンという存在が私の内側に流れ込んでくるような体験をして以降、ベートーヴェンが私の頭から離れることはない。

そのため、一年目のプログラムが終了する六月半ばあたりから、ベートーヴェンが残した作品の中にある秘密を探究してみたいという思いが吹き上げてきたのだ。偶然にも昨日、上の階に住むピアニストの知人と話す機会があり、ベートーヴェンのピアノソナタに関する専門書を何冊か借りた。

同時に、仮にピアノソナタを非線形ダイナミクスやダイナミックシステムアプローチの手法を用いて分析する際の、楽曲の定量化についてヒントを得た。最初の研究は、ピアノソナタ第1番に絞り、主に定量的な分析から導き出された定性的な発見事項を明らかにしていくものになるだろう。

この研究を出発点として、ベートーヴェンの活動区分や作風区分と重ねる形で、音楽家としてのベートーヴェンの内面の成熟過程とピアノソナタ全体の発達過程を探究してみたいと思う。自宅に戻り、それらのことをあれこれ考えながら、借りた書籍を読みふけっていると、いつの間にやら深夜になっていた。

睡眠時間がいつもより随分と少ないのだが、今朝の目覚めは爽快以外の何物でもなかった。2017/4/17

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