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930. 場所だけに宿る精神


オーストリアの旅から帰ってきても、やはりその余韻が依然として自分の内側に残っている。四六時中、観想的な意識状態にあり、全ての事柄を自覚的に目撃することができるのだ。

今日からフローニンゲンでの生活が再び開始されたのだが、昨日までの旅行を少しずつ咀嚼しようとするような運動が私の無意識の中で起こっている。それを証明するように、先ほどもウィーンとザルツブルグに滞在していた時のことを知らず知らず回想していた。

ザルツブルグに滞在中ふと、フローニンゲンの自宅に戻ったら、書斎に置かれたソファの一部のスペースを芸術の世界に入るためだけの空間にしたいと思った。備え付けのソファは非常に大きなものなのだが、これまでそのソファは本来の役割を果たしていなかった。

というのも、ソファ全体に書籍や論文が積み重ねられ、人が座れるスペースは全くなかったのだ。だが、ザルツブルグに滞在した時に、突如として、ソファの一部を腰掛けられるようにし、美術館で購入した画集や様々な博物館で購入した資料を閲覧できるようなスペースにしたいと思った。

実際に、昨夜フローニンゲンに戻ってきた時に、就寝前にそのスペースを作った。今日は夕方の仕事を終えた後、ソファのその場所に腰掛けた。

そして、ウィーンのベートーヴェン記念館で購入した、難聴に苦しむベートーヴェンが執筆した遺書をおもむろに手に取り、遺書の世界の中に入り込んでいた。この遺書については、以前の日記に書き留めていたように思う。

そのため、ここでは再度遺書の内容について取り上げることはしない。しかし、その遺書を読みながら感じていたのは、場所だけに宿る精神の存在だった。

この遺書が書かれた「ハイリゲンシュタットの遺書の家」に実際に足を運び、その場でこの遺書を読んだ時、私はそこにベートーヴェンの精神が依然として宿っていることに気づいた。これは誇張でも何でもない。

私たちは書物を通じて、あるいは人づてにある偉大な人物についての情報を得ることができる。だが、その人物が実際に生活をし、実際に活動に打ち込んでいた場所には、「情報」という言葉の重みを超えたものがそこに存在していると思うのだ。

ハイリゲンシュタットの遺書の家の周辺は、ベートーヴェンが実際に歩いていた場所だ。そしてこの家は、ベートーヴェンが実際に暮らしを営み、今私の手元にある遺書を書いた場所なのだ。

その場で私が包まれていた感覚は、何かに取り憑かれたような感覚であった。あるいは、私の存在に新たな何かが宿ったような感覚であったと言っていいかもしれない。

これは、ウィーンで訪れたモーツァルト記念館、シューベルト記念館、フロイト博物館、そしてザルツブルグで訪れたモーツァルト博物館においてもほぼ同じであった。それらの場所には、彼らが高めた精神が未だに宿っているのだ。

彼らが実際に生きていた場所に足を運ぶこと、何らかの作品が生み出された場所に足を運ぶことは、彼らの存在や作品に宿る精神に触れることに他ならないのではないだろうか。そこには、偉大な才能を育んだエネルギーが一点に凝縮しており、特殊な磁場が形成されている。

そのように思えて仕方ない。場所という物理的な空間に、精神的なものが間違いなく宿っている。

そうでなければ、それらの場所に足を踏み入れた瞬間に、なぜ私の精神があれほどまでに振動していたのかについて説明がつかない。私がこれからの日々で行っていく必要があるのは、今回の旅で訪れた場所だけに宿る精神の一つ一つと向き合っていくことだろう。2017/4/11

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