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919.【ザルツブルグ訪問記】学会の初日を振り返って


ザルツブルグでの学会における初日の発表が全て終了した後、学会の参加者は演奏会に招待された。会場はザルツブルグ大学の歴史ある図書館であった。

学会の主催者とともに、学会会場を後にし、歩いて目的地に向かった。私たちはアルプス山脈を遠目に眺めながら、ザルツァハ川沿いを歩いていた。

夕日が落ちる前の時間帯であり、辺りはまだ明るかった。ザルツブルグの市内には交通量の多い通りが幾つかあるが、そうした通りを歩いていると、ザルツブルグの良さが一向に見えてこなかった。

だが、雄大な自然をゆっくりと堪能できるような場所では、ザルツブルグが持つ真の豊かさを実感することができる。道中私は、老齢のデンマーク人の教授と親しくなった。

その方の関心領域は、認知的発達であり、私と共通のものであった。また、その方がヴィゴツキーをはじめとしたロシアの発達論者から多大な影響を受け、ジェームズ・ギブソンの生態心理学と複雑性科学の知見を統合させるような試みをしているそうだ。

デンマークにおける発達研究についてあれこれ質問をしてみると、デンマークにおいては戦後、ヴィゴツキーを筆頭としたロシアの発達心理学を積極的に取り入れるような動きがあったそうだ。現在でもその影響が色濃く残っているらしい。

その教授のように、デンマーク国内において、認知的発達研究に複雑性科学の知見を取り入れている研究者はほとんどいないとのことである。また、認知的発達をどうしても脳科学の知見からだけを持ってして捉えてしまうという傾向がデンマークにあるらしく、それは日本でも同じであるし、他の国にも当てはまることだと思った。

当然ながら、脳科学の発展は認知的発達研究に多大な貢献を果たしている。ただし、主観的な現象で満ちた認知的発達現象を物理的な脳の観点からだけを持ってしてアプローチするのは、どうしても限界があるのだ。

その方とは終始、認知的発達に関する話をしており、ロシアの発達論者を含め、発達研究に多大な功績を残した幾人かの研究者の中で、私が知らない人物について色々と教えを受けていた。その方の話にもあったように、人間の脳や身体運動に関する現象に対しては、随分と前から複雑性科学の知見が取り入れられている。

しかし、心や知性といった主観的な現象に対して、複雑性科学の知見を取り入れようとしている研究者はそれほど多くない。今回の学会には、複雑性科学の知見を教育の分野に応用する研究を行っている研究者が何名かいた。

特に、夕食を共にしたギリシア人のディトリオス・スタモフラシス教授は、複雑性科学の知見を教育の分野に適用することに関して、その道の牽引役を担っている。スタモフラシス教授に話を聞くと、ギリシャにおいても事情は同じであり、教育の分野に複雑性科学の知見を取り入れている研究者は一握りだそうだ。

現在の私も複雑性科学の理論と手法を教育研究に適用しているため、スタモフラシス教授との話も大いに盛り上がった。話を続けているうちに、スタモフラシス教授の名前をどこかで見たような気がしていた。

すると、少し前に注目していた書籍 “Complex Dynamical Systems in Education (2016)”の著者の一人であることを思い出した。ハーマン・ハーケン教授との出会いに引き続き、スタモフラシス教授との出会いもまた偶然であった。

複雑性科学の知見を社会科学に適用することを趣旨にした国際学会はそれほど多くないため、この学会には、各分野の重鎮が何人も参加している印象を私に与えた。この学会は二年に一回開かれるものであり、次回の学会にも必ず参加したいと思う。2017/4/8

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