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869. つぼみと存在の流転

April 2, 2017

とても静かなピアノ曲が書斎の中を流れていく。旋律に耳を傾けては、書斎の窓の外に広がる景色を眺めるということを意識的に行っていた。

 

気づかない間に、書斎の窓の外に見える木々につぼみのようなものが生まれていることを発見した。あの厳しい冬の時期、私は毎日、窓の外から見える枝だけの木々を眺めてきた。

 

冷たい雪が木々に覆いかぶさっていることも目撃してきたし、激しい風に折れそうになっていることも目撃してきた。それでも、それらの木々は、今このようにして存在し続けている。

 

しかも、新たな実と花をもたらすつぼみがそこに宿っていることは、私の心を幾分躍らせた。彼らと共に、過酷な冬を一緒に過ごすことができて本当に良かったと思う。

 

私はどんな時でも、それらの木々を毎日見てきた。同時に、彼らもどんな時でも、私を見ていたのだと思う。

 

春が近づき、つぼみが宿る木々を見ながら、彼らとは一心同体であり、彼らから大きな励ましをいつも私は受けてきたことに改めて気づかされる。今私が感じているこの不思議な感情こそが、自己と他者が共存関係にあって初めて生み出される類のものなのかもしれない。

 

新たな季節の到来に向けて、再度私は、どのような環境や状況に置かれても、その場その時に、絶えず自己の存在の灯火を静かに力強く燃やし続けたいと思った。

書斎に流れるピアノ曲と窓の外から見える木々のおかげで、随分と心が休まったような気がした。改めて、私にとって最も心が休まるのは、静かな環境と音楽の中で、落ち着いて好きな書物や論文に目を通すことだと思った。

 

また、それと並行して、自分が書き留めておきたいことを文章にすることも、私の心を最も落ち着かせてくれる行為である。今のところ、それら以外に、心が休まる行為というのはなかなか見当たらない。

 

毎日の生活は、観想的かつ黙想的な意識の中で、絶えず読み、絶えず書くという行為を通じて、規則正しく刻まれていく。逆に言えば、基本的に私の毎日の生活は、絶えず読み、絶えず書くということの中で形作られるものであるがゆえに、常に最も心が休まった状態にあると言えるかもしれない。

 

ここ五年間ほどを振り返ってみると、日本や米国に滞在していた時において、心が休まらない状態というのは、読むことと書くことから離れることを余儀なくされている時であった。欧州での生活を始めて以降、読むことと書くことの中に没入できていることには、本当に感謝をしなければならない。

 

そのおかげで、ようやく自分の取り組むべき仕事が始まったと思っている。読むことと書くことを通じて、自己を超越し、それらの行為が他者への関与につながるまで、この生活を静かに継続させていく必要があるだろう。

 

窓から見える木々と同様に、絶えず一つのサイクルを小さな変化とともに一生継続させていくような生き方をしたいと強く思う。果実や花に気づくのは、それが現実世界に存在している時だけでなくてもいいと思うのだ。

 

果実が落ち、花が散った後にも、裸の木々を見ながら、私たちは果実と花をそこに見ることができる。いや、そこにそれらを見なければならない。

 

それこそが、私たちの存在が不滅であり、永遠に流転することの真理だと思う。2017/3/23

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