
昨夜は、中国人の友人であるシェンの自宅で夕食を共にした。オランダ語のコースを一緒に受講した時から、シェンとは仲が良く、彼は非常に親しみやすいパーソナリティーを持っている。
有り難いことに、シェンが中華料理を振る舞ってくれるとのことであり、シェンと久しぶりに会って話をしたいという気持ちもあったため、夕食の招待を断る理由などなかった。シェンが住んでいるのは、フローニンゲン大学のメインキャンパスの近くにある学生寮である。
この学生寮は面白い作りになっており、半分が観光客用のホテルになっており、もう半分が留学生用の学生寮になっている。私はその国際寮に向かって夕方に自宅を出た。
その道中、ある地点に差し掛かったところで、フローニンゲンの街の象徴でもあるマルティニ塔が見えた。早朝とはまた異なる、爽やかな夕方の空を背景にしたマルティニ塔がいつもとは異った印象を私に与えた。
それは厳かにそこにたたずむという印象ではなく、静かにそこにたたずむという印象であった。その印象を受けた時、私は少しばかり今後の自分の生活について考えていた。
直感的に、当初の計画よりも長くこの街にいるのも悪くないのではないか、という思いが湧いてきたのだ。具体的には、九月から在籍する予定の「実証的教育学」というプログラムが終了した後、すぐにアメリカに戻るのではなく、もう一年間ほどリサーチアシスタントとしてフローニンゲン大学で働くのも選択肢として悪くないと思ったのだ。
私と同じプログラムに在籍するインドネシア人のタタから話を聞くと、プログラム終了後もオランダに残る手段の一つとして、米国の大学院で言うところのOPTのような制度があるらしいのだ。私も米国の大学院を修了した時に、このOPTという制度を活用した。
これは一般的に、修士課程か博士課程を修了した留学生は、卒業後に一年間ほど就労許可を与えられるというものである。タタ曰く、これと似た様な制度がオランダにもあるとのことである。
「タレントディベロップメントと創造性」「実証的教育学」の二つのプログラムが修了した後に、再び米国の大学院にすぐさま戻るのではなく、二年間の学びを咀嚼するような期間を一年ほど設けてみても良いのかもしれないと考えるようになっている。
その一年の期間で、さらに探究を深め、自分の研究や日本の企業との仕事を継続させていきたいと思うようになった。それを実現するためには、フルタイムでオランダの大学でリサーチアシスタントとして働くよりも、可能であればパートタイムとして働きたい。
タタから教えて貰ったこの制度が、フルタイムのみならず、パートタイムにも適用されるのかどうかを確認しておきたい。そのようなことを考えながらシェンが住む国際寮に到着した。
時間通りにシェンが出迎えてくれ、私たちは夕食を共にした。シェンから中国の教育や文化などについてあれこれと話を聞き、お互いの現在の研究内容や今後の進路について話をしていると、当初の予定よりも随分と長居をしてしまった。
シェンから聞いた話の中で、幾つかさらに考えを深めたいものや非常に面白い話があったので、それらをまたどこかで書き留めておきたい。とても有り難いと思ったのは、私が中国の代表的な思想家の哲学を学びたいと伝えたところ、ちょうどシェンが春に中国に一時帰国するので、その時に、私が特に好きな思想家である孔子、老子、荘子の原著を購入してくれるとのことであった。
夕食後に、シェンから中国の詩について色々と話を聞いていると、改めて詩というものに関心を強く持つようになった。孔子が編纂したと言われている『詩経』も中国から持ち帰ってくれることになり、それを元に詩というものに関する探究を少しずつ着手してみたいと思う。20172/25