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704. 経験の中と原点回帰


自己の形成にせよ、知識体系の構築にせよ、そこには不断の繰り返しがやはり必要だと思った。毎日、日々の出来事を振り返り、そこから自分の中で新たな気づきを獲得し、自己の内側で種々の体系を構築することを強く意識し始めるようになってからしばらく経つ。

森有正先生が指摘するように、経験の中にある出会いと経験の中における確認、そして、そこから新しい事実を発見していくサイクルは、自己にせよ知識体系にせよ技術体系にせよ、私たちの内側で様々な体系を構築していく際に、極めて大切であると改めて思った。

とかく私たちは、出会いというものを外側にある対象との接触と思ってしまったり、外側の基準と照らし合わせて自分の思考や感覚を確認してしまったりする傾向にある。そのようなことをしていては、真に経験が深まることはなく、内側の成熟が進展していかないのだと思うのだ。

出会いというのは、仮に外側の対象がきっかけになったとしても、内側に起こるものであり、それを内側の経験の中で捉えていくことが大切である。さらに、自分の思考や感覚を外側の基準と照らし合わせて確認するのではなく、自らの経験を通じて確認していくということは、いかに大切なことだろうか。

自分の内側で真の発見を得るためには、このように、経験の中で出会い、経験の中で確認していくという不断の実践が不可欠なのだろう。

昨日の散歩中、原点回帰と新たな領域の深耕を同時に行っていきたい、という思いが突発的に生じた。ここ最近の自分を振り返り、複雑性科学に関する探究——ダイナミックシステムアプローチや非線形ダイナミクス——が、日々の探究活動のほとんどを占めており、純粋に発達心理学を探究しているという感覚はほとんどないことに気づく。

確かに、もはや人間の発達を研究する際に、そして発達支援の実務を行う際に、既存の発達心理学の枠組みだけでは不十分なのだ。そのため、複雑性科学の探究を現在進めていることは納得いくものだと言える。

また、大きな括りでいえば、複雑性科学に立脚した探究も、人間発達に関わる探究をしていることに変わりはないだろう。しかしながら、発達心理学の古典的なテキストをじっくりと読み返したいという思いが突如として湧き上がってきたのである。

今はそのような時間的余裕がないため、近い将来、純粋に発達心理学の古典的なテキストに再度目を通したいと思う。現在の私の研究や実務の出発点となった領域は、やはり発達心理学であるため、こうした原点回帰を行うことは、どこかのプロセスで不可避に生じるものなのだろう。

こうした原点回帰の思いを胸に持ちながら、ダイナミックシステムアプローチと非線形ダイナミクスに関する知識体系をさらに高度なものにしていく修練を続けたいと思う。

いつか世界のどこかの大学院で、発達心理学の理論的な講義と、ダイナミックシステムアプローチと非線形ダイナミクスの研究手法に関する講義を受け持ちたいという思いがふつふつ湧き上がる。その日に向かって、今日も歩きたい。2017/1/31

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