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702. データが語る物語と喧嘩の意義


今日の昼食中にふと、大人になってからというもの、人と喧嘩をすることがめっきり減ったものだと思った。一方、自分は何かと喧嘩をすることの必要性を最近強く感じている。

ここで述べている喧嘩とは、もちろん、身体のぶつかり合いのような次元のものも当然含まれるが、私が最近必要だと思っているのは、そうした次元での喧嘩ではない。考えや行動方針に関する対峙や対立の必要性である。

喧嘩というのは、それが身体の次元であれ、思考の次元であれ、強烈な感情を常に伴う。往々にして、喧嘩の最中は我を忘れることが多いほどに、そこでは強力なエネルギーが生じている。

そして、最も私が興味深く思うのは、喧嘩後の、あの清々しい爽快感である。当然ながら、喧嘩の終わり方にもよるが、私がこれまで経験してきた喧嘩はどれも、大きなエネルギーの衝突と解放がもたらす和解がそこにあったような気がする。

他者と和解を結ぶ瞬間のあの感覚。少しばかりの恥じらいが混じりながらも、衝突から新しい次元に関係性が高められたかのような清々しさが、自分の過去の喧嘩にはあったように思う。

そのようなことを考えていると、喧嘩にはどこか、他者との関係性をさらに深める重要な意義を持っている気がしてならないのだ。今の私は、特定の他者ではなく、集合的な思想や風潮と対峙・対決するような必要性を感じていることに気づいた。

これは非常に大事なことである。これは私と集合的な思想や風潮との和解を目指したものではなく、真正面からの衝突により、お互いが次の次元に到達するために必要なものなのである。もしかすると、相互発達とは、二つの存在間の生やさしい関係から生じるようなものではなく、大きな対決から生じるものなのではないだろうか。

そのようなことを考える小さなきっかけになったのは、昨日何気なく眺めていた研究データだった。昨日は、「状態空間分析(state space analysis)」と言う、ダイナミックシステムアプローチの一つの研究手法を扱うソフトウェアをあれこれといじっていた。

この手法は、「複雑性と人間発達」というコースで取り上げたものであり、その時に、分析に使うための研究データも担当教授から提供されていた。そのデータを簡単に述べると、10組の親子が数週間にわたって行った対話が、感情パターンによって分類され、それが時系列になったものである。

具体的には、怒り、苛立ち、ニュートラル、愛情というように合計で7つの感情パターンによって、親子の対話が時系列に並べられた形式を持ったデータである。状態空間というのは、親の感情パターンを縦軸に取り、子供の感情パターンを横軸に取った二次元空間のことを指す。

厳密には、多次元な状態空間を構築することも可能だが、基本的には二次元のものが最も多い。私が眺めていたのは、二次元の状態空間内で、時の経過に応じて親子が繰り広げる感情パターンの動的な変化のプロセスであった。

そのプロセスを丹念に追っていると、データがもはや単なる記号ではなく、物語を語るものにしか思えなかったのである。例えば、こんな物語が垣間見えた。

子供が苛立ちの感情パターンを示し、それに対して親はニュートラルに振る舞い、子供がそれでもまだ苛立ちを抱えているので、親がニュートラルから苛立ちを通り越して怒りの感情を示し、その後、子供が怒りの感情を示す。

だが、こうした怒りの感情のぶつかり合いの先に待っているのは、たいてい、和解や愛情という感情だったことがとても面白い。データが静かに語りかける物語から、さらに想像力を膨らませると、対立最中のエネルギーの衝突の様子や、和解後の爽快感を親子が感じ、そこから愛情を深めていく様子が見て取れたのだ。

このような何気ない実証データからも、衝突することの意義を実感し、衝突して初めて、新たな次元での関係性が結ばれるきっかけが生まれうるのではないかと思ったのである。冒頭で述べたように、広義の意味で他者と対峙をしなくなっていたのは、そもそも自分の中に芯のようなものや守るべきものがなかったからではないかと思わされた。

しかし、今の私が対立や対決に乗り出そうとしているということは、ようやく芯や守るべきものを自分の中に見出したことと深い関係があるだろう。そして何より、集合的なものとの対決には、自分の言葉がなければ話にならない。

集合的なものとの対決に乗り出す時期に来たと実感しているのは、自分の言葉を私が少しずつ発見しつつあることと大いに関係しているだろう。2017/1/30

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