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669. 発達的介入の効果に関する測定評価


「複雑性と人間発達」の最終回のクラスの後半では、私の論文アドバイザーを務めるサスキア・クネン先生のレクチャーが行われた。主要なテーマは二つあり、一つは発達支援という介入の効果を評価する方法であり、もう一つは「モンテカルロ法」と呼ばれる手法についてである。

とりわけ、前者の発達支援という介入の効果を評価測定することは、私が携わる実務と研究の双方から非常に重要なテーマであった。実際のところは、そもそも発達に介入することそのものに対して慎重にならなければいけないが、仮に何らかの介入を行なった場合、その効果を正確に評価測定することはとても重要なことだと思う。

発達を支援する介入方法は様々あるが、例えば、発達理論に基づいたコーチングやサイコセラピーであったり、リーダシップ能力や問題解決能力などを向上させることを意図して作られた能力開発トレーニングなどがあるだろう。

私が現在携わっている実務と関連付けると、実証ベースの発達支援コーチングや人財開発プログラムを提供する際に、やはりその効果測定を適切に行うための高度な知識と技術が要求される。特に、発達現象が非線形的かつ複雑であるという性質上、その効果を測定するのは一筋縄ではいかない。

そこから、既存の統計学の手法では限界があるということを、今日のレクチャーからも強く実感させられた。現在、金融の世界では、複雑な挙動を見せる株価を予測するために、非線形ダイナミクスの手法が積極的に活用され始めている。

それと同様に、複雑な挙動を見せる人間の発達過程を予測するために、特に、介入支援後の挙動を分析することに対しても、非線形ダイナミクスの手法は非常に有効だと言えるだろう。 そもそも既存の統計学の手法にはどのような限界があるのかを少し考えてみた。例えば、ある子供が失敗に対する恐れを感じており、ソーシャルスキルに関する問題を抱え、なおかつ学業におけるパフォーマンスが低かったとする。

また、統計結果から、失敗に対する恐れやソーシャルスキルの欠如と低い学業パフォーマンスが関係していることがわかっているとする。そこから、失敗に対する恐れに介入していくような計画を立案したと想定してみる。

ここで議論の的になるのは、そもそも既存の統計手法を用いた結果は、果たしてその子供にどれだけ当てはまるのか、という問題である。既存の統計手法は基本的に、集団を対象にして平均を用いることが多く、集団の平均を基礎に導かれた結果が、どれだけ特定の一人の人間に該当するのかは定かではないことが多いだろう。

つまり、この場合、失敗に対する恐れやソーシャルスキルの欠如と低い学業パフォーマンスが、その子供の中でどれだけ重大なものなのかがわかりにくいということだ。何らかの工夫や方法をもってして、これが既存の統計手法によって明らかになったとしても、さらにもう一つ大きな問題がある。

二つ目の議論の的は、失敗に対する恐れに対する介入の条件とタイミング、そして誰から介入を受けるかの問題である。実務的には、この問題が最も重要であるように思うし、人間のダイナミックかつ複雑な特性を考慮してみても、この問題は最初の問題よりも大きな意味を持っていると思う。

そして、既存の統計手法では、この問題に対する回答を与えることは基本的にはできない、ということを学んだ。つまり、既存の統計手法は、複雑な発達現象のプロセスを評価するためには適さないということである。

既存の統計手法は、ある要因と別の要因の線形的な関係を評価することには強みを発揮することができる。しかし、人間の発達現象では、ある要因が別の要因と絶えず相互作用するようなことが起こっており、それらの要因が持つ非線形的な関係を評価することには、既存の統計手法は強みを発揮することはできないのだ。

動的なシステムとしての発達現象に潜む、非線形的な要因間の関係性を評価するためには、ダイナミックシステムアプローチや非線形ダイナミクスの発想と手法が求められる。要約すると、介入手法の結果のみならず、介入のプロセスそのものを絶えず正確に把握することに関して、ダイナミックシステムアプローチや非線形ダイナミクスは強みを発揮するということを改めて学んだ。

具体的な方法については、また後日書き留めておきたいと思う。2017/1/19

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