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651. 構造的カップリングとシンクロナイゼーション


第六回目の「複雑性と人間発達」のクラスが終わり、私は図書館に向かった。図書館で幾つかの論文をプリントアウトし、そのままその場でそれらの論文に目を通していた。

年代としては少し古いが、 “Science and complexity (1948)”という論文を読みながら、考えさせられることがあった。私は現在、科学者という立ち位置と実務家という立ち位置を取りながら日々の探究と仕事を進めている。

それは多分に、元々経営コンサルティングに携わっていたというこれまでの自分のキャリアから影響を受けているだろう。それ以上に重要なのは、それらの両方の立ち位置を取ろうとする自分の内側の想いかもしれない。

論文を読みながら、科学的な研究というのは記述的なアプローチで世界に関与し、実務家としての仕事は規範的なアプローチで世界に関与することなのだ、ということを改めて思った。私はどちらかに偏るのではなく、その両者に携わっていきたいという想いがどうしてもある。

どちらのアプローチも固有の観点と方法で世界に関与していく道に他ならず、その一方の道を辿ることに対して、私は強い違和感を覚えているのだ。二つの道を同時に辿り、両者の道を開拓していくことにどれだけの困難がつきまとったとしても、私は二つの道を通じた世界への関与を行っていきたいと強く思う。

そのようなことをこの論文を読みながら考えていた。論文から目を離し、時計が示す時刻を確認すると、年末に私が行ったのと同様に、同じプログラムの他の学生が研究の中間発表をする時間が近づいていた。そのため、図書館をあとにし、発表会場に向かった。

今回の発表を担当したのは、六人の修士課程の者たちである。最初の発表者は、私の親友でもあるエスターだった。彼女とは時折情報交換をし、事前に彼女の研究内容について知っていたのだが、改めて発表を聞くことによって、色々と明確になる点があった。

何よりも私が感銘を受けたのは、発表後の教授陣との応答だった。前にも紹介したように、彼女は元々、天体物理学を専攻しており、非常に鋭い知性を持っている。

今日も同じクラスに参加していた時に、私の理解が追いつかない内容をいとも簡単に理解し、説明を行っていた博士課程の者に対して的確なコメントを投げかけていた。同様のことを、教授陣を相手に行っている様子を見たとき、感化されるものがあった。

エスターの発表に続いて行われた研究内容はどれも、研究結果が待ち遠しいと思うようなものばかりであった。特に、最後の発表を担当した私の友人であるドイツ人のジェレミーの研究はとても面白い。

彼の研究テーマを一言で述べると、同調現象(シンクロナイゼーション)である。より具体的には、二人のボート選手のボートを漕ぐ動きがどのようにシンクロナイゼーションするのかを調査するものである。

シンクロナイゼーションは、今の私にとって、なぜだかとても気になる現象だということを以前言及したように思う。二つの動的なシステムが結びつくという「カップリング」を起こす時、二つの構造的にカップリングされたシステムはシンクロナイゼーションを起こすと考えられている。

そうだとするならば、この「カップリング」という現象がどのように発生するかのメカニズムがわかれば、シンクロナイゼーションという現象をうまく説明できることにつながり、システム間でシンクロナイゼーションを生み出すことにも応用できるように思うのだ。

私たちの身の回りにシンクロナイゼーションを示す具体例は多々ある。興味深い現象としては、二人の女性が一緒に生活を始め、二人が構造的にカップリングされれば、二人の生理周期が同調し始めるというものがある。

二人の人間は基本的に異なる変動性を持っているが、ジェレミーの仮説と同様に、シンクロナイゼーションが起こりやすい波形があるような気がしている。その最有力候補は、変動性が激しすぎず、また安定的すぎないピンクノイズだろう。

もしかすると、ピンクノイズを発する二つのシステムはカップリングを起こしやすく、結果としてシンクロナイゼーションを起こすのではないか、という仮説が浮かぶ。ジェレミーの研究結果がどのようなものになるのかとても待ち遠しい。2017/1/12

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