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541. 変動性を加味したトレーニングについて


雨雲が立ち込め、いつも以上に暗い闇に包まれているフローニンゲンの土曜日の朝。ここ最近の毎週末は、オンラインゼミナールのクラスがあるため、早朝の習慣的な実践に費やす時間を調節し、朝から二時間ほどの講義を行った。

今回のゼミナールのように、教師としての役割を担う時にせよ、学習者として大学のクラスに参加する時にせよ、いつも学びの性質について考えさせられることには変わりがない。つくづく学びというのは、時間をかけながら少しずつ深めていくものだと思わされる。

昨日言及した「反復性」と「非線形性」という特徴は、すべての発達プロセスに当てはまるがゆえに、当然ながら学習プロセスにも当てはまる。学習を通じて、現象を捉える視点が増えていくこと、そしてそれらの視点が組み合わさりながら、現象に対するより深い洞察が行えるようになってくるというプロセスは、大変関心が引かれるテーマである。

さらに、現象に対して深い洞察が行えるようになることは、同時に、現象に対する深い関与を可能にしうる、というのも見逃せない点だろう。言い換えると、知識の絶対量と深さが増してくるに従って、実践力の幅と深さが増す関係にあるように思う。

今日のクラスでは、スポーツ科学の観点から、私たちの知性や能力が卓越の境地に至るプロセスについて取り上げていた。特に印象に残っているのは、「変動性」に関する議論になった時に、受講生の方から、「ブロック練習」と「ランダム練習」の特徴とその違いについて言及があったことである。

その方の話を聞きながら、私たちの知性や能力を育んでいくときに、いかに変動性を織り込んだ実践に励むことが重要かを再認識させられた。特定の能力を高める際に、その能力をさらに細分化し、それらの一つ一つの要素を単調な反復練習を通じて高めていこうとすると、練習の直後には高い能力を発揮できていたとしても、その後の能力の定着率が低いというのはとても納得する。

さらに、それらの要素を単調な反復練習ではなく、環境やタスクを変化させ、変動性を盛り込んだトレーニングに従事することによって、最初の練習の直後に高い能力を発揮できなかったとしても、ランダムに鍛えられた要素が一つのまとまりとして徐々に機能し始め、その後の能力の定着率が高いというのは非常に納得がいく。

これはまさに、私たちの知性や能力が動的なシステムであるという特徴と密接に関係しているだろう。要するに、私たちの知性や能力は一つの動的なシステムとして、常に変化することを宿命づけられた性質を持っており、その性質と合致した、変動性を加味したトレーニングを行うことによって、システムの機能がさらに高度化していく、ということである。

そのようなことを考えると、根性論に基づいた反復練習を強調する、旧態依然とした過去のトレーニング観というのは、早急に見直される必要があるだろう。スポーツ科学の世界では、「非線形教授法」「制約条件アプローチ」「差異学習アプローチ」などの、変動性を加味したトレーニング理論や手法が、実証研究をもとに日増しに洗練されているのだ。

そうした知見が今後現場で浸透していくにつれ、能力開発に関する考え方やアプローチは随分と様相が異なったものになるのではないかと思う。

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