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538. 内面世界の共有


複雑性科学と発達科学を架橋した領域については、これまで一人で学習を進めてきたため、探究の開始を知らせる鐘は、随分と前に鳴らされていたのだと思う。しかし、自分の研究プロジェクトを通じて、当該領域を真に探究することは、「複雑性と人間発達」というコースが開始されることによって、始まりがもたらされたと言えるかもしれない。

少なくとも、関心テーマを異にする多様な人たちと共に、ダイナミックシステムアプローチを探究し始める鐘の音は、まさにこのコースが始まってから鳴らされたのだと思う。そうした始まりを知らせる鐘の音は、研究者としての私のみならず、一人の人間としての私にとって、とても大きな意味を持つものだと実感している。

この鐘の音の意味は、今後も継続的に探究していくべきテーマだと思う。今この瞬間に一つ言えることは、私はようやく他者とお互いの世界を真の意味で共有し始める一歩を踏み出した、ということである。

多くの人にとって、これは非常に些細なことに思えるかもしれないが、私にとっては、極めて重大な出来事である。自分の城すら構築できていないのに、他者を架空の城に招き入れることを奨励する世間の風潮に対して、辟易していた自分がいたのは確かである。

「城」という言葉は、「世界」という言葉に置き換えた方がいいかもしれない。今後も間違いなく、自分の内側の世界を深めていくことに従事し続けていくことは避けようがないだろう。しかし、これまでと違うのは、その作業はもはや一人ではできないところにまで到達してしまった、ということである。

これまで自分が絶えず構築しようと思っていたものを「城」と表現するのであれば、おそらく、その所有権は私にしかないことを暗に示唆しているだろう。しかし、ひとたび「城」という言葉から離れ、「世界」という言葉を用いるのであれば、今の私が日々深めていこうとしているものの特徴を、より正確に表現してくれると思うのだ。

自分でも驚いたのは、私の世界の所有権は、私だけに付与されているのではなく、私を取り巻く他者にも付与されていることに気づき始めたのである。これは概念的な気づきではなく、体験を通じた意味での気づきである。

それゆえに、この気づきは、自分の内側で生じた変容を確かに示すものだと思うのだ。自分の世界の所有権が私にもあることから、今後も自分でその世界を深めていく試みを怠ってはならない、ということは言うまでもない。

だが、それ以上に重要なことがある。私は自分の世界だけではなく、他者の世界の所有権を保持しているということであり、他者もまた私の世界の所有権を保持しているがゆえに、共にお互いの世界を深めていく関与を行っていくことが何より重要なのである。

これは今の私にとって、切実な重要性である。そのようなことを考えると、「所有権」という概念も、今の私の感覚を的確に表すものではないかもしれない。内側の世界の所有性というのは、非常に難しい問題だと思う。

今日参加したクラスの中で、他者と言葉を交わすことを通じて、確かに私の世界と他者の世界という固有の二つの世界を確認することができたと同時に、見逃してはならない共有世界がそこに生起していたことにも気づいていたのだ。

さらには、その瞬間に生起した共有世界が、二つの固有の世界に影響を与えていることも見て取れたのだ。他者と同じ世界を共有した瞬間、自分の世界のパレットの色が間違いなく変化したことを見て取った。

他者と私は異なる色を持った世界を構築していながらも、ひとたび二つの色が混じり合い、新たな一つの色を生み出した瞬間に、その一つの色がお互いのパレットの色に浸透していく姿が見て取れたのである。

人間の内面世界において、このような現象が起こることは、とても不思議ではないだろうか。お互いの相互作用から生まれが産物が、再び各人に影響を及ぼす構図を目の当たりにした時、私はもはや、これまでの方法で他者や世界と関与できなくなったと言える。

例えば、ロバート・キーガンの段階モデルをこの体験に適用した時、過去の私と現在の私がどのような段階にいたのかは一目瞭然である。しかしながら、そうした説明よりも、その体験自身が何より自分にとって大きな意味を持つものであったのだ。

構造的発達心理学の枠組みを頭で理解しようとすることと、それを自己の存在を通じて理解させられることの間には、埋められないほどの大きな溝がある。今回の体験はまさに、存在が知識に追いついた瞬間であり、知識が経験によって智慧に昇華される瞬間であったように思う。

地図を眺めることと、地図上の世界を実際に歩むことは次元が異なるのだ。私はこれからも、実際の世界を確実な足取りで少しずつ進んでいきたいと思う。

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