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493. 三つの制約条件を考慮に入れたトレーニング


私が住んでいるアパートは、一階にアメリカ人の留学生、二階にドイツ人の留学生、三階に私、四階にスウェーデン人の留学生が住んでいる。当初私がこのアパートで生活を始めた時は、下には誰も住んでおらず、上にはサウジアラビアから来た留学生が生活をしていた。

その後、上下に新しい留学生がやって来たという経緯がある。ここの住人は、すべて修士課程以上の学生であり、二階のドイツ人留学生は化学を専攻しており、四階のスウェーデン人留学生は産業工学(industrial engineering)という経済学・経営学・社会学を架橋する分野を専攻している。

四階に住むスウェーデン人のアクセルとは時折テキストメッセージを通じて連絡を取り合う仲である。産業工学について私は馴染みがなかったため、アクセルに話を聞いてみると、彼は特に、情報技術とシステム工学の観点から経営管理上の問題解決を支援する枠組みを設計することに関心があるようだ。

先ほど、そのアクセルと階段で偶然顔を合わし、お互いの近況を確認しあった。私は一つの最終試験しかないが、アクセルは二つの最終試験と二つのプレゼン発表が来週に控えていると言う。二つのプレゼンは、グループで設計した経営システムを紹介するものらしく、数日前から二日間ほど、グループメンバーがアクセルの部屋に泊まり込みで作業を進めていたそうだ。

確かにその二日間は、アクセルのキッチンから立ち込める夕食の匂いがいつもとは異なっており、その理由が理解できた。階段での立ち話を終え、お互い自室に戻り、再び学習を続けることにした。

前回の記事で紹介した、実践者・環境・タスクに関わる三つの制約について、トレーニングを設計する際に、さらにもう一つ重要なことがある。それは、与えるタスクの変動性に着目するということである。

以前紹介したように、私たちの知性や能力をミクロなレベルで眺めると、それらは感情状態や環境からのフィードバックによって絶えず変化しているのだ。その姿はまるで、変化に富む波のようである。

私たちの知性や能力は、本質的に絶えず変化しているものであり、変動性の度合いが少ないトレーニング、つまり単調な繰り返し練習は、知性や能力の本質的特性に反したものとなる。そうした特性を踏まえると、トレーニングのポイントは、いかに変動性のある反復練習を取り入れるか、にあるだろう。

若干逆説的に響くかもしれないが、つまり、単に同じ動作や同じ手順を繰り返し行うのではなく、その動作や手順を絶えず変えてみたり、あるいはそのタスクを取り囲む環境設定を変えるなどして、変動性が担保された反復トレーニングを提供することが、知性や能力の発達に重要であることがわかっている。

望ましいトレーニングは、三つの制約を考慮しながら、制約条件そのものに変更を加え、実践者が絶えず変化に富む実践を繰り返し行えるようにすることにあるだろう。その時に、実践者の柔軟性と適応性が阻害されないように注意し、実践者がその環境やタスクに最適な動きを発揮できるようなスペースを与えることが重要である。

これは、三つの制約の固さ・柔らかさを考慮したトレーニング、と表現していいかもしれない。要するに、三つの制約条件のいずれかが強く縛りを与えている場合には、それを緩めるような支援をし、逆に緩すぎる制約には、あえて縛りを付け加えるような支援が必要になるだろう。

これは言うは易く行うは難しであり、実際のところ、実践者・環境・タスクの制約条件の変動性度合いを全て見極められるような指導者・トレーナー・コーチは少ないだろう。だが、実践者の真の成長につながるようなトレーニングを提供するためには、この壁を必ず乗り越えていく必要があると思うのだ。

来週の火曜日に迫った最終試験に向けて、自分の学習を取り巻く三つの制約条件に着目し、それぞれの制約に介入することで、最大限の学習効果を引き出しながら、引き続き試験に向けた準備をしていこうと思う。

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