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470. 専門家の見立ての頼りなさについて


今日は「タレントディベロップメントと創造性の発達」の第六回目のクラスに参加してきた。このコースもいよいよ来週で最後であり、再来週には最終試験が控えている。今日のテーマは「才能と創造性の測定・評価」だった。

一年目の最後のコースとして「タレントアセスメント」を履修しようと計画しており、そのコースと同様に、今日のクラスはスーザン・ニーセン先生が担当した。大きなトピックは、プロフェッショナルジャッジメントと数理的ジャッジメントの比較であり、今日のクラスの内容から色々と考えさせられることがあった。

プロフェッショナルジャッジメントというのは、専門家がこれまでの自分の知識や経験に基づいて、クライアントの診断・評価を主観的に行うことを指す。一方、数理的ジャッジメントというのは、何らかの科学的な測定手法に基づいて、クライアントの診断・評価を客観的に行うことを指す。

専門家であれば領域を問わず、日々の実践の中でプロフェッショナルジャッジメントを多々行っていると思う。例えば、コーチであればクライアントの思考特性の評価、サイコセラピストであれば精神病理の診断、経営コンサルタントであれば経営上の問題の発見、教師であれば学習進度の評価など、様々なものが考えられる。

一言で述べると、今日のクラスのポイントは、そうしたプロフェッショナルジャッジメントがいかに不正確かを理解することにあった。もちろん、専門家の知識や経験が増せば増すほど、その領域に関する直感力のようなものが磨かれるのは間違いない。

だが、近年の研究は、こうした直感力が実に頼りのないものであることを暴き出しているのも事実なのだ。どちらかというと、私は人間が持つ直感力などの潜在能力を擁護する立場を採用しているため、今日のクラスを通じて、専門家の直感というのは診断や評価に関していかに頼りのないものかを示す調査結果をいくも見て、少しばかり愕然とした。

あえて直感力を強固に擁護する論陣を張ってみても、今日のクラスの内容や課題論文に掲載されている実証結果によって、それらはことごとく却下されていった。私たち人間にはどうも自分の力を過信するような傾向があり、専門家ともなればなおさらそうした過信が強まるであろうから、直感の用い方には細心の注意を払うべきだと思った。

さらに興味深い指摘が課題論文の中に記載されていた。それは、プロフェッショナルジャッジメントと数理的ジャッジメントを組み合わせてもほとんど効果がないということである。これは私の直感に反した実証結果であった——ここでも自分の直感が覆されているという確かな事実がある。

“Clinical versus actuarial judgment (1989)”という論文を読み進めながら、数理的ジャッジメントがプロフェッショナルジャッジメントに勝るとしても、専門家の固有の直感力も見捨てがたいため、それらの折衷型のアプローチが良いだろうと仮説を立てていたのだ。

しかしながら、論文の後半には、折衷型はうまく機能しないという実証結果が提示されていた。こうしたことがなぜ起こり得るのかというと、大きな理由として、両者の折衷型を採用している場合、客観的なアセスメントを取り入れたとしても、アセスメントの結果が自分の意図に反している場合には、意識的・無意識的にその結果を無視して自分の主観的な判断に頼ってしまうことが挙げられるだろう。

アセスメントの結果を自分の都合の良いように取り扱うというのは、プロフェッショナル倫理に抵触していると思うのだが、実際には相当に優れた内省的判断力と倫理力を備えていなければ、ついつい自分の経験に頼った判断をしてしまいがちなのではないかと思う。

この論文は、専門家という人間が内在的に抱えている盲点を見事に指摘している点において価値があると思った。そういえば以前、米国における死亡要因の第三位に医師の誤診がランクインしているデータを見かけたことがある。

おそらく医師は通常、プロフェッショナルジャッジメントと数理的ジャッジメントの折衷的なアプローチを採用して仕事に携わっているのだと思う。しかしながらこのデータが示しているように、こうした折衷型のアプローチは、多くの誤診を生み出す一つの要因になっている気がしている。

専門家がついつい自分の経験に頼った判断を行ってしまいがちなことに付け加えて、私たちの認知能力にも根本的な限界があり、それがプロフェッショナルジャッジメントの質を低下させているようにも思う。

どういうことかというと、確かに専門家は問題に潜む複数の変数を直感的に把握することは得意だと思うのだ。ただし、専門家を含めて人間の知性の限界は、そうした複数の変数を統合して、一つの正確な診断を導けるだけの力はないのである。

ケン・ウィルバーの発達段階モデルでは、高度な知性段階を「統合的段階」と形容しているが、上記の問題が人間心理に根ざしたものであるため、仮にこうした段階にある人間であっても、プロフェッショナルジャッジメントには内在的な問題が必ずつきまとうと考えている。

上記の話題は、専門家にとって耳の痛い話かもしれないが、専門家は誤診を通じてクライアントと向き合っている可能性が高いことを認識しておいた方が良さそうである。

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