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435. 研究プロセスにおけるホロン階層について


先日のクネン先生とのミーティングで一つ課題として提出された「理論モデルの創出」について少しばかり考えていた。本来であれば、研究テーマに関する理論モデルを構築することがクネン先生の意図だと思うが、理論モデルを構築することそのものについて少し考えていたのである。

私の研究では応用数学のダイナミックシステムアプローチを活用することになっており、「応用数学」という言葉にあるように確かに研究プロセスの中で数式モデルを構築する必要がある。こうした数式化の前提には、定量的なデータが必要であることは間違いない。

そして得てして、数式化とは「定量化」と同義だという認識があるだろう。数式化の中には紛れもなく定量化の要素はあるが、それだけではないことに気づいた。クネン先生がなぜあれほどまでに、数式モデルを打ち立てるよりも先に理論モデルを構築することが先決だと述べていたのかが少しわかったような気がする。

というのも、特に社会科学の領域では、現象を数式化するためには、定量化よりも先に定性化のプロセスが先になければならないからである。要するに、数式を立てる目的や何を数式として表現したいのかを先に明らかにしなければ、数式など立てようがないのである。

そういえば、シンボルに関する研究で優れた功績を残したエルンスト・カッシーラーも再三にわたって、数式化は定量化と同一ではない、ということを述べていたことを思い出した。やはり数式化の大前提には、どのような現象に着目して、何のためにどのような数式を立てるのか、という定性化のプロセスが存在しているのである。

ある意味、私の研究プロセスにおいて、理論モデルを検証するために数式化が必要であるため、定量化よりも定性化の方が重要性が高いように思う。階層構造で言えば、定性化が研究の土台にあり、この土台がなければ、定量化という次の階層は消滅してしまうだろう。

これはアメリカの思想家ケン・ウィルバーが指摘している「リアリティはホロン階層で構築されており、下位ホロンが消滅すると上位ホロンも消滅する」という言明を裏付けるようなものだと思う。本当に研究プロセスという現象もホロン階層で成り立っているのだと思わされた。

ここで興味深いのは、定性化の方が下位ホロンに該当し、定量化の方が上位ホロンに該当しており、私は下位ホロンの方に重要性を見出しているということである。「発達は善である」という思想を盲目的に信奉している場合、上位階層に置かれたものの方が重要だ——あるいは「価値がある」——という認識が生まれる。

しかしながら、下位ホロンが消滅すると上位ホロンが自動的に消滅してしまうというリアリティの特性が掴めていれば、上位階層に置かれたものの方が重要である(価値がある)と安易に述べることはできないだろう。

あえて述べると、今回の私の研究においては、下位ホロンに該当する定性化の方が重要かつ価値のあることだと思っている。その理由の一つには、自分の理論モデルが構築されなければ、そもそも数式化などできるはずもなく、研究が進まないからである。

もう一つは、自分独自の理論モデルを構築することが研究領域に対する貢献だと考えており、理論モデルを構築することの中にこそ独自の価値が宿ると思っているからである。クネン教授から与えられたお題とはだいぶかけ離れてしまったが、自分の考えを少しばかり整理することができたので、これからは理論モデルの原型を幾つか考えることに力を注ぎたい。

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