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414. 知識を活用する実践力


今週末は休日の二日間ともに曇り空である。気温もめっきり寒くなり、家の中でも長袖や靴下を身につけるようになった。欧米の寒い地域の家には、窓の壁際にヒーターがよく備え付けられている。現在のフローニンゲンの私の自宅にも、リビングと寝室、そしてトイレにヒーターが備え付けられている。

これを使う日が刻一刻と迫ってきていることを身にしみて感じている。秋のそよ風というよりも、今日は秋の寂びしい風が吹いいていた。そのような中、昨日と引き続き、今朝もオンライン読書会を開催した。

読書会の参加者のある方から、知識に関する話を聞いてハッと気づかされたことがある。今の私は、「知識とはそもそも一体何なのか」というテーマ、言い換えると知識の性質に関心を寄せている。また、知識がどのようなプロセスで獲得され、どのように知識体系がより重層的な構築物になっていくのかにも関心がある。

どちらの関心事項にも、哲学の領域における認識論が特に鍵を握ると思う。知識が重層的な構築物に変容していくプロセスは、実際のところ、構造的発達心理学が扱う主要テーマであるため、これまでのように漠然と発達モデルを眺めるのではなく、知識体系の構築プロセスに焦点を絞って関連書籍を読み直す必要があると思っている。

知識の性質や知識体系の獲得プロセスに対して現在関心を持っている理由の一つには、自分自身が新しい知識領域に身を投じていることが挙げられるかもしれない。ダイナミックシステム理論やダイナミックネットワーク理論など、新しい知識領域に参入している一人の当事者として、未知の分野に関する知識とどのように付き合っていけばいいのか、という課題に直面していると言える。

現在抱えている課題を言い換えると、新たな領域の知識を一つの理論体系として駆使できるようになるためには、どのようなプロセスを経る必要があるのか、ということになるだろう。とかく未知の分野に参入すると、基本的にはその領域固有の知識を一から習得していくことになる。

もちろん、他の領域で獲得した知識やこれまでの経験によって、新しい領域での知識体系の構築速度には差が出てくると思われるが、基本的には専門知識を一つ一つ理解していくという作業が出発点になるだろう。「知識を活用する実践力」の重要性に異論を挟むことはないのだが、知識が具体的な文脈で実践に活用されるためには、実は随分と長い道のりがあるように思う。

結論から述べると、ある知識を実践の場で活用するためには、その知識を単独で身につけているだけでは不十分であり、その知識を一つの体系の中に組み込んだ状態で身につけておく必要があると思うのだ。カート・フィッシャーのダイナミックスキル理論で言えば、ある知識を真に実践の場で有効活用するためには、知識レベルを最低限11以上にしておく必要があると考えている。

フィッシャーのレベル尺度では、レベル9は抽象的な概念や理論のある一つの側面を理解できるような段階である。例えば、「ダイナミックスキル理論とは、人間の知性や能力の動的な発達プロセスに着目するものである」というのは、ダイナミックスキル理論の一つの側面を言い表しているため、この発言はレベル9の知識段階だと言える。

一言で述べると、レベル9の知識段階では、概念や理論の単一的な側面しか捉えることができないため、このレベルではダイナミックスキル理論を深く理解しているとは言えず、実践の場で活用するには実におぼつかないのだ。上記のように、ダイナミックスキル理論に関する表面的な定義だけを獲得している状態では、その理論を実践の場で活用することなど到底不可能であることは想像に難くない。

ここからレベル10に移行すると、抽象的な概念や理論の複数の側面を捉えることができ、それらを一つの線で結び付けられるようになってくる。例えば、「ダイナミックスキル理論は、知性や能力に関する12個のレベル尺度を持ち、複雑性科学の様々な概念を取り入れている。例えば、「創発(emergence)」という概念は、あるレベルから次のレベルに移行するときに見られる現象である」というように、ダイナミックスキル理論に関して複数の側面(視点や要素)を捉え、それらを緩やかに関係付けることができるようになってくるのだ。

このレベルに到達すれば、先ほどのレベル9のように単発的な知識——点のような知識——ではなく、幾分重層的な知識を獲得していることになるため、実践の場で起こる諸々の現象を徐々に説明できるようになってくるかもしれない。しかしながら、この知識レベルでもやはり不十分であり、非常に動的かつ複雑に変化する実践の場で即座に知識を活用できるようになるためには、より深いレベルで知識を獲得していくことが必要になるだろう。

そのため、少なくともその分野の知識を一段上のレベル11の段階まで高めていくことが重要になると思う。このレベルに至れば、ある概念や理論を構成する要素をより多様に認識することができるだけではなく、それらの要素を縦横無尽に組み合わせ、一つの知識体系(システム)として保持することができるようになる。

往々にして、ある知識が実践の場で役に立たないというのは、その知識が体系(システム)レベルで身についていないことに起因しているように思うのだ。知識レベルが11に到達していないと、点や線で実践領域を捉えようとするため、実践の状況や文脈が変わると、点や線がずれてしまい、獲得した知識が無用の長物になってしまうことが起こるだろう。

状況の変化に柔軟に対応しながら知識を活用していくためには、少なくともその知識が「面」の形になっていなければならないと思うのである。まさに、知識を面として活用することができるのがレベル11である。知識を「立体」として獲得・構築することのできるレベル12や、複数の立体をメタ的に組み合わせることのできるレベル13まで知識レベルを高めることができればもちろん理想である。

いずれせよ、実践力を身につけていくためには、強固な知識体系が必要だということである。動的かつ複雑に変化する実践の現場で、獲得した知識を自在に活用していくためには、少なくともレベル11の知識段階が求められると思う。2016/10/2

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