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342. 人と組織の発達支援に向けたダイナミックシステム理論のメタファーについて


今日からオーストリアの生物学者ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ(1901-1972)の主著 “General system theory: Foundations, development, applications (1968)”に取り掛かり始めた。この書籍はダイナミックシステム理論に通底する「一般システム理論」を学ぶ上で必ず読む必要がある、と思って日本にいるときに購入していたものだ。

長らく積読状態にあったこの書籍を紐解いたのは、以前の東京の自宅から成田空港へ向かう電車の中であったことを思い出した。私にとって電車の中というのは、落ち着いて書物を読むのに適した場所ではなく、書物の概要を把握し、中身をざっと確認するための場所に過ぎない。そのため、その時の読み方ではベルタランフィの一般システム理論に関する理解を深めることはできなかったのだ。

今朝改めて本書を紐解き、今日からしばらくこの本を読み進めていくことになるだろう。全ての章立てと小見出しを確認し、もう一度中身を一瞥したところ、この書籍はやはりシステム理論全般を理解するための必須の基本書であるとわかった。

現在読んでいるのは2015年の改訂版であるが、今から45年以上も前に書かれたこの書籍の内容が色褪せることはないと感じた。もちろん、最新のシステム科学の知見から言えば、ところどころ修正するべき事実が本書に盛り込まれているのだろうが、ベルタランフィが一般システム理論を打ち立て、システム科学の領域を開拓していった軌跡を理論的・方法的な観点から辿り、その探究プロセスを追体験することができる。

改めて、このような新しい科学理論が打ち立てられる際には、既存の理論にとって変わる力が必要なのだと思った。「正しいメタファーが無ければ、ある対象を捉えることはできない」とトーマス・クーンが指摘するように、ベルタランフィは新しいメタファーを提示し、これまでの科学理論では見過ごされていた現象を私たちに見えるようにしたことに優れた功績があると思う。

科学的なパラダイムというのは、当然ながら諸々の理論や概念の集積体なのだと思うが、重要なことは人々を惹きつけるような(巻き込むような)力を持ったメタファーがそこにあるかどうかだと思うのだ。既存のメタファーよりも納得性と妥当性の高い新たなメタファーが提示されるとき、パラダイムというのは方向転換を始めるのだと思う。

これは本書で展開されている一般システム理論のみに当てはまることではなく、発達科学の領域におけるダイナミックシステム理論の誕生の際にも当てはまることであった。現在ダイナミックシステム理論を学びながらつくづく思うのは、この理論の有益性は、発達現象に関する新たなメタファーを私たちに提供してくれることだ。

ダイナミックシステム理論を大きく分けると、数式を使ったアプローチと理論的なアプローチの二つがあるが、研究者でもない限り、数式を使ったアプローチに親しむ必要性はそれほど高くないと考えている。ダイナミックシステム理論が内包する数々の理論や概念を理解することは、発達現象に関して構造的発達心理学だけでは見えてこない様々な側面を浮き彫りにしてくれるのだ。

そうしたことを可能にするのが、理論や概念の元になっている独特なメタファーである。ダイナミックシステム理論が持つメタファーに習熟すればするほど、発達現象に関してこれまで見過ごされてきた新たな側面が開示されて来るということを日々実感している。それゆえに、個人や組織の発達支援を行う実務家の方たちにも、ダイナミックシステム理論の数式的側面ではなく、理論的側面には是非着目していただきたいと思う。

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