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341. 連続的かつ非連続的な問いと答えの変容プロセス


フローニンゲン大学でのプログラムが開始する日が近づいてきた。この街でもう一ヶ月も過ごしていたのかという驚きと共に、まだ一ヶ月しか経っていないのだ、という気持ちが生じている。最も正確なのは、時間の上ではわずか一ヶ月ばかりしか経過していないが、自分の内面で経験されたことの密度は濃く、それが時の質感を高めているような感じである、という気持ちだろう。

この一ヶ月は様々な出来事があったが、そうした出来事に光が当てられることは、私の日常が常に一定のリズムで刻まれていることの裏返しなのかもしれない。今日も淡々と自分の仕事を継続させている。少しずつ着実に自分の仕事を一歩でも前へ進めることの難しさと、その困難さを超克していく精神力により磨きをかけていく必要があることを感じている。

毎日似た様な問いに直面し、それに対して現時点での答えらしきものを提示しようとする自分が常にいる。こうした状態と格闘している最中、結局のところ、問いがあって答えがあるのではなく、もしかしたら問いしかないのではないか、という様な考えに行き着いたのだ。

問いが全く同じであっても、それに対する答えがこれだけ時間と共に変化と深化していくものであるならば、やはり答えなど存在せず——存在したとしても一時的な仮の答えである——、問いしか存在しないのではないか、とただただ思わされる日々の中を今生きている。

そのような気づきの中、論文アドバイザーのサスキア・クネン先生の研究室を今年の一月に訪れた時にいただいた彼女の論文 “Fischer’s skill theory applied to identity development: A response to Kroger (2003)”を午前中から午後にかけて読んでいた。

クネン先生は、特に青年期と成人期のアイデンティティの発達研究にダイナミックシステムアプローチを活用している欧州を代表する研究者である。この論文では、アイデンティティの発達研究に対して、エリク・エリクソン、ロバート・キーガン、カート・フィッシャーの三つの発達理論をダイナミックシステム理論の観点から捉え直すという面白い試みがなされている。

応用数学の一分野であるダイナミックシステム理論に言及する論文の多くには数式表現が出てくるが、この論文では数式が一切用いられていないため、アイデンティティの発達や上記三つの発達理論とダイナミックシステム理論について関心のある方にはお勧めできる論文である。

論文を読みながら、私たちのアイデンティティの発達が連続的なものでありながらも、質的に大きな変容を遂げる非連続的な性質を宿しているのと同じように、問いと答えの関係において、答え自身は連続的な同一性を保ちながら短期的には同様の答えを産出し続けるが、ある時何かをきっかけにして答えに質的な変容が発生するのではないかと思う。

先ほどの内容に対して自家撞着に陥っていると思うので、ここでもう一度整理した方が良さそうだ。先ほどは、探究の歩みを進める際には問いしか存在しないのではないか、ということを述べたが、やはり答えというものも重要なものとして存在していると思うのだ。

問いに対する答えというのは、私たちのアイデンティティのように連続的な同一性を保ちながらも、非連続的な大きな飛躍を遂げる瞬間があるのである。そして答えが紛れもなく存在しているからこそ、答えがある程度の深度に達した時、それが問いに影響を与え、これまでの自分では立てられなかったような新たな問いが現れるのだ。

そうであるならば、問いというものも連続的な同一性を保ちながら、質的に大きな発達を遂げるという性質を内包しているのだろう。私たちの内側で生じる問いや答えがこのような特徴と関係性を持っていることはとても興味深いことだと思うのだ。2016/8/28

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