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291. 閉ざされた感覚を解放して

August 14, 2016

欧州小旅行が明日に控えているが、通常とほとんど何も変わらない日々である。今回の小旅行では荷物を最低限にし、身軽に動けるようにリックサックとトートバックだけを持っていく。

 

ヘーゲル博物館のあるシュツットガルトでは、ヘーゲルの主著 “Phenomenology of Mind (2003)”を、ピアジェの生誕地であるニューシャテルでは、ピアジェの主要論文が収められた “The essential Piaget (1977)”を読みたいと思っていたが、それでは荷物が重たくなりすぎるので、今回は絞りに絞って、ケン・ウィルバーの “The simple feeling of being (2004):邦訳『存在することのシンプルな感覚』”を持っていくことにした。

 

もちろんこの本だけを持っていくことにしたのにはそれなりの理由があるのだが、「この書籍を今というこの時期に読み返さなければならない」というようなメッセージを受け取ったことが最大の理由だろう。ある意味で、この書籍以上に洗練かつ危険なウィルバーの書籍を私は知らない。

 

ここ最近の私は特に意識状態の変化がダイナミックであり、日常生活を営む際に通常現れる意識状態とは質的に異なった状態に参入することが多くなっている。体験の種類と範囲は広く、様々なものがあるが、昨日の昼食後に起こった体験としては、目を閉じると、そこに千変万化する壮麗なイメージが無数に動いていることを知覚するというようなものだ。

 

通称「ヴィジョン」と呼ばれるようなこうした体験は、もはや私にとっては常態化してしまっており、気を抜いてしまうと、呼吸という本来奥深い実践の中に私たちが何も発見することができないのと同様に、重要な示唆を逃してしまうことになりがちである。

 

昨日の体験の最後に現れたイメージを幾分掴むことができ、それを記憶に保持するところまで成功した。それは、天上界につながるような白い階段をゆっくりと登っていく自分の姿であった。

 

こうした体験を振り返ってみると、どうやら現代社会で生きていく上では開く必要のない感覚が、人間の中に内在的に多数存在しているようなのだ。またそれと同時に、何かを生み出そうとする創造エネルギーのようなものが本来的に私たちに備わっているのだとも思う。

 

しかしながら、そうした感覚は現代社会を生きる上ではそれほど必要とされていないものであり——逆に危険視されたり、忌避される傾向の方が強いだろう——、新たなものを創出するような創造エネルギーというのも、残念ながら現代社会では抑圧の対象となっている。

 

振り返ってみると、米国での留学中は、それらの感覚を開く理論や方法、現代社会によって抑圧された創造エネルギーを回復する実践をひたすら求めていた自分がいたように思う。結果として、時間差はあるが、現代社会では抑圧の対象となる諸々の感覚や湧き出るエネルギーを徐々に解放している自己が自分の中に芽生え始めているのだと思う。

 

私の場合、開かれた感覚は基本的に暴走することはないのだが、エネルギーに関しては、火山が噴火するかのような感覚に陥ることが頻繁に起こる。通常は流動的なマグマのようにそのエネルギーは静かに力強く動きながら自分を絶えず支えてくれている、という印象がある。しかし、何かをきっかけとして、そのエネルギーが噴出することが度々あるのだ。

 

火山のような熱情的なエネルギーを制御しようとすることはもはやせず、その全てのエネルギーを現在は書物を読むことと文章を書くことに当てようとしている。つまり、そのようなエネルギーを健全な形でこの世界に現出させるために、絶えず読むことと絶えず書くことによって自分の日常を形作ろうとしているのだ。

 

そのような日常こそ、自分の解放された感覚と熱情的なエネルギーにとってみれば最善なのだと思う。

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