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268. 出発前日の夜


——後に続く者あるを信ず——神風特攻隊

出発前夜、成田空港の近くにある「ホテル日航成田」に宿泊することにした。今、ホテルの自室でこの記事を書いている。

成田空港に到着するまでの電車の中で、私は窓から見える景色をぼんやりと眺めていた。電車の窓枠が絵画の額縁になったかのような錯覚に襲われ、額縁の中に動く雪山を見つけた。

それは本物の雪山ではなく、雪山のように見えた積乱雲の塊である。そういえば、米国時代にこのような積乱雲を見かけたことはほとんどなかったのではないかと思わされた。最後の最後に、日本の気候が作り出す格別のお土産を受け取ったように感じた。

日本のこの固有の時の流れ方、夏のこの空気の香り、それら日本でしか感じることのできないありとあらゆることを、私は決して忘れたくないと生まれて初めて思った。この先、日本で生活をする日がいつになるのか正直全くわからないのだ。

昨年のように、今後の人生のどこかのタイミングで日本に戻り、一時的に日本で生活をするかもしれない。しかし、その時はしばらく訪れないであろうということを、直感的に知ってしまっているのだ。

だからこそ、そして今この瞬間だからこそ、日本が持つ固有の「日本性」の全てをありのまま感じることができると思うのだ。成田近郊の街のネオンに日本が顕現されている。手元にある日経新聞に日本が顕現されている。ホテルの自室に備え付けられている歓迎用の煎茶の茶葉に日本が顕現されている。

そうしたことを思うと、抑えがたく込み上げてくるものがあるのだ。

出発を前にして、私の中で立てた誓いを確認する。それは、明日から始まる新しい人生において、発達科学者として人間の発達に関する「真」の追究のみならず、現代社会から抹消されつつある「美」や「善」の領域の追究に全身全霊を注いでいくということ。

そして何より、自分の生命の灯火を極限まで燃やし続けながら生き抜くことはできるのか。それに挑戦し続けたい。究極的にはこれなのだ。

こうした生き方を希求し、実践し続けた辻邦生先生や森有正先生のような先人を信じ、そして後に続く者をただ信じて、ひたすらに進んでいきたいと私は思う。2016/7/31夜

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