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262. 創発と相転移


昨晩ふと、自分は毎日同じリズムで同じようなことをし続けていながらも、毎日新しいことに取り組んでいるという感覚が芽生えていることに気づいた。ありきたりの表現になってしまうが、つまり、毎日が常に新しいものとして自分に訪れ、毎日の取り組みの中に新しさが必ず混入しているのだ。

毎日の生活や実践における反復の中に微細な差異を常に見出している、という発見だろうか。プロのピアニストが毎日同じ楽曲を演奏しながらも、そこに新しい発見を常に見出すように、私も日々の実践の中に顕在化される新しさを常に見出している。

この発見事項とダイナミックシステム理論を絡めてみると、どのようなことが言えるだろうか?ダイナミックシステム理論の観点から述べると、私たちの意識は世界との関与の仕方を絶えず組織化するという特徴を持っている。

要するに、私たちの意識という動的システムは、ダイナミックに変動する外部環境に応じて自らを絶えず変化させ、新たな自己を作り上げているということである。ここで興味深いのが、新たな自己を作り上げる瞬間に「創発(emergence)」現象が起こることだ。

創発とは、システムがそれまでにない質を自ずから生み出す現象を指す。冒頭の話と関連付けると、毎日同じことを継続させているように見えがなら、そこに微細な差異を見出すというのは、創発現象を発見していたということに他ならないのだ。

創発とは、構造的発達心理学で言うところの大きな発達、すなわち段階の発達というよりも、ミクロな発達のことだとイメージすると分かりやすいかもしれない。段階の発達というマクロな発達は、ダイナミックシステム理論の世界では「相転移(phase transition)」と呼ばれる。

学んだ概念や理論を自らに適用するという自己実験と日々の自己観察によって、創発というミクロな発達と相転移というマクロな発達が持つメカニズムと両者をつなぐプロセスが少しずつ見え始めてきている。

つまり、ダイナミックシステム理論を実践と自己観察を通して学ぶことによって、大きな質的変容、すなわち相転移が起こる地点にどのように自分を導いていくのかという道筋が見えてきているのだ。自己をどの方向に向かわせ、どのような実践をすれば、相転移が起こる地点に持っていけるのかを体験的に掴み始めているということだ。

発達のみに言及してきたが、自己変容にせよ、自己治癒にせよ、そこには創発と相転移という共通の特性が潜んでいると思うのだ。自己を変容することと治癒をすることの双方において、自己という動的なシステムを絶えず創発し、相転移を生じさせることが必要になると考えている。

ここからも、創発と相転移の発生メカニズムを掴むことができれば、変容と治癒に関する実践に有益な知見を加えることができるのではないだろうか。発達支援に携わる実践者がダイナミックシステム理論を学ぶ意義はここにあると思うのだ。

そして言うまでもなく、組織という動的なシステムの変革を行う者にとっても、ダイナミックシステム理論に関する知識は不可欠の素養になると思う。2016/7/11

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