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257. 効率化という穏波と荒波


昨日、海外転居に伴う住居変更や確定申告等の手続きを全て終え、あとは明後日に迫った国際心理学会議の発表準備と荷造りをするだけとなった。書きながら一つ思い出したのは、銀行で行う手続きが一つ残っていたことだ。

銀行の窓口がまさか午後3時に閉まるとは思ってもおらず、昨日行おうと思っていた手続きが一つ積み残しになっていたのだ。最近はインターネットの発展もあり、外国送金がオンライン上で行うことができるという便利な状況になっている。

積み残しになっていた手続きは、海外転居に伴うオンラインバンキングの登録に関するものだ。これが完了すれば、「渡欧前にやることリスト」に記載の全ての項目にチェックマークを入れることができる。

今回の渡欧に際して、とても便利だと思ったのは、東京の自宅からスーツケースを目的地の空港まで運んでくれるサービスである。私は、中学2年生の時に初めて海外に行く時に搭乗したJALの印象が忘れられず、その時以来、日本を経由する海外移動では必ずJALを利用するという忠誠を誓っている。

今回も成田からフランクフルトまではJAL便を利用することになっている。その際に便利なサービスが「JAL手ぶらサービス」と呼ばれるものである。

これは搭乗クラスにもよるとのことであるが、今回は大きなスーツケース2個を自宅からアムステルダムの空港まで運んでもらうことになった。成田空港まで大きなスーツケースを持っていく必要もなく、機内持ち込み用の小さなスーツケースだけを持っていけばいい、というのは実に快適である。

今回はフランクフルトからアムステルダムまでは、KLMオランダ航空を利用することになっているが、搭乗券の情報を伝えれば、フランクフルトでスーツケースを受け取ってそこからKLMに荷物を預けることをせずに、自宅からアムステルダムまで一気に運んでくれるのはとても有り難いことだと思った。

ただし、アムステルダムからフローニンゲンまで、フローニンゲンから新居までは自分でスーツケースを持ち運ぶ必要があるので、三つのスーツケースで不自由なく移動できるような重さにしなければならない。

辻邦生先生の『パリの手記』を読むと、1950年代において飛行機での海外移動が少しずつ普及し始めていた様子がわかるが、辻先生はあえて33日間かけて横浜からパリまで船便で移動し、その時の苦労と充実感が文章から色濃く伝わってくる。

当時の状況から考えると、現在は物の移動と人の移動は格段に効率化されている。大学時代、ドイツに留学していた先輩が「国立(くにたち)から吉祥寺に行くのとケルンに行くのとでは変わらない」と述べていたことを思い出したが、グローバル化に伴ってそれだけ移動時間も短縮され、精神的な距離も縮まっているのだろう。

しかし、効率性を追求した結果として、海外へ時間をかけて移動することでしか味わえない濃密な時間が希薄化されてしまったり、海外の目的地に到着した際の感動も空疎なものになってしまう可能性も否めない。

どこを効率化し、どこを濃密化させるかの意思決定は個人に委ねられているため、私たちは思慮深く効率化の風潮と付き合っていく必要があるだろう。さもなければ、濃密な経験や感動は効率化という荒波に一気に流されてしまうだろう。

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