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251.「構造的カップリング」と「相互浸透」


オランダへの出発がいよいよ一週間を切った。オランダ到着後に必要な各種手続き(例:住民登録や銀行開設など)の流れを確認している。

4年前にジョン・エフ・ケネディ大学でシステム理論に関するクラスを履修して以降、数年間はその分野から離れていたが、再びシステム理論の探究に着手している。というのも、フローニンゲン大学で学ぶダイナミックシステム理論の理解をより深いものとするためには、その原型であるシステム理論に精通する必要があるからだ。

しかし、そうした思いとは裏腹に、日本滞在中のこの一年半は、システム理論や発達心理学とは直接関係しない(間接的に関係する)哲学や生物学の書籍を読むことが多かった。そろそろギアを入れ替える時期に来ていると判断したため、積読状態になっているシステム理論関連の書籍をゆっくりと紐解いていくことにした。

「システム理論」と一口に言っても、その対象範囲は非常に広い。積読状態になっている書籍の背表紙を眺めると、ウィーンの生物学者ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィ(1901-1972)が提唱した一般システム理論を源流とし、アメリカの文化人類学者のグレゴリー・ベイトソン(1904-1980)、サイバネティクスを提唱したアメリカの数学者ノーバート・ウィーナー(1894-1964)、チリの生物学者フランシスコ・ヴァレラ(1946-2001)とウンベルト・マトゥラーナ(1928-)が提唱したオートポイエーシス論、複雑性科学に大きな貢献を果たしている理論生物学者のスチュアート・カウフマン(1939-)の名前が並んでいる。

それに加えて、ドイツの社会学者ニコラス・ルーマン(1927-1998)の社会システム理論、ドイツの心理学者カート・レヴィン(1890-1947)のダイナミックフィールド理論を学びながら、ダイナミックシステム理論の理解を深めていこうと思っている。

積読状態になっている書籍を上記のように書き出してみると、これら全てに関する理解度をこの一年間である程度のところまで持っていくには、相当な集中と修練が必要であると身が引き締まる思いである。

私の場合、書き出すことをしないと、探究対象になかなか本腰を入れて取り組まない傾向があり、上記のように一旦書き出してみることによって集中的に取り組む分野が鮮明になった。

取り組むべき分野を明らかにしたところで、引越し準備の合間を縫いながら少しずつシステム理論の学習を再開させている。

ニコラス・ルーマンの社会システム理論を始めとするシステム科学全般において、「構造的カップリング」と「相互浸透」という言葉が度々登場する。これらは、複数のシステム間の関係を考える上で重要になる概念である。

しかしながら、それらの意味を正確に理解することと両者の違いを明瞭にするのは意外と難しいと感じている。まず、「構造的カップリング」というのは、二つの閉鎖的でありながらも自律的に運動をしているシステムが相手のシステムの環境条件を作り出しているような関係性のことを言う。

より詳しく述べると、一方のシステムAにとって、相手方のシステムBは環境としてのみ機能しており、当該システムAにとって意味のある環境変化を生み出す情報しか相手方のシステムBから受け取らないという意味で、両者は閉鎖的な関係であるが、双方のシステムがお互いの環境条件になっているという意味において相互依存的な関係でもある。

例えば、ロバート・キーガンの発達理論において、発達段階4の人たちの関係性の構築の仕方は構造的カップリングのようだと言える。段階4の人たちは、他者の固有の価値体系を理解しながらも、他者の存在は彼らにとって単なる外部環境的なものに過ぎない。

つまり、段階4の人たちは、自己の価値体系という閉鎖的なシステム内にとどまっており、自己のシステムを強化させることに有益であれば、他者(他のシステム)と相互的な関係を構築しようとするのだ。

一方、「相互浸透」というのは、二つの異なるシステムが相互に関係しあうことによって、それぞれが複雑性を増していく現象を指す。これはまさに、キーガンの理論で言うところの段階5「相互発達段階」を想起させる。

ルーマンによると、相互浸透の鍵は、二つのシステムが互いに開放的であり、各々のシステムの複雑性を他方へ移転させることが可能なことにある。こうした相互浸透によって、お互いのシステムは変容を遂げていく機会を得るのである。

発達段階5に至ると、自己システムが閉鎖的ではなく開放的なものとなり、他のシステムの複雑性と自己のシステムの複雑性をやり取りするようなあり方になっていく。この姿はまさしく相互浸透的だと言えるのではないだろうか。

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