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240. ダイナミックシステム理論と多様な応用領域


抑えがたく高鳴る胸の鼓動を感じながら、深海の真っ暗闇に差し込む光を仰ぎ見ている心境である。こうした心境になっている自分を見るにつけ、渡欧の日が着実に迫ってきているのを実感する。

9月からのフローニンゲン大学では、複雑性科学と発達科学の双方をありとあらゆるエネルギーを注ぎ込んで、骨の髄まで学び取る。これがフローニンゲン大学滞在中の私の主たる学術的な目的である。

当面の間は引き続き、個人の知性・能力の発達に関心を向けていくだろうが、その探究過程で得られた知見は個人を超えて、組織の発達にも活用できると思っている。私がこれから理解を深めていくのは、応用数学の一分野であるダイナミックシステム理論であり、これは複雑なシステムを探究対象とする。

人間の知性や能力というのは、まさに複雑なシステムであるため、ダイナミックシステム理論の知見は知性や能力の発達研究やその支援に対して多いに活用できるのだ。そして、グループや組織の発達プロセスは、個人の発達プロセスと同様に、あるいはそれ以上に複雑なシステムとして捉えることができるため、組織開発にもダイナミックシステム理論は大きな役割を果たすと考えている。

おそらく今後は、「ダイナミックシステム」という用語が頻繁に出てくると思われるが、自分の関心に合わせてこの用語の適用範囲を決定してもらいたいと思う。つまり、個人の知性や能力をダイナミックシステムとして捉えた説明を読みながら、組織に関心があれば、その説明内容を組織の発達に適用する道をご自身で探っていただきたいと思うのだ。

日本でも随分前から複雑性科学そのものは着目されており、一般書も数多く出版されている。そのため、複雑性科学に関する日本の土壌はすでに比較的整備されていると思うのだ。ここから一歩進めて、各自の実践領域に複雑性科学の知見を取り入れる潮流が生まれてきてくれればと思う。

私の関心に従って購入した専門書のタイトルを眺めてみると、複雑性科学を活用した実践領域として、「複雑性科学と知性発達(発達心理学領域)」「複雑性科学と組織開発(経営学領域)」「複雑性科学と教育実践(教育学領域)」「複雑性科学と集合心理(社会心理学領域)」などがある。

これらの実践領域を中心に探究を深め、実践知に昇華させていくことが、9月からのフローニンゲン大学での学術生活における重要課題となる。私の心というダイナミックシステムは、現在の段階によって生み出された規則(秩序)に従いながらも、実に動的な動き(混沌)を毎日見せてくれている。

【追記】:「ダイナミックシステム」と「ダイナミカルシステム」の違い

ダイナミックシステム理論の学習当初、「ダイナミックシステム」という用語と「ダイナミカルシステム」という用語の違いについてそれほど気に留めていなかった。当時の自分にとって、両者は同じものを指すのだろうと思っていた。

というのも、両者を日本語に訳そうとすると、どちらも「動的システム」という訳語に収斂してしまい、両者の違いが伝わりにくかったからだ。簡潔に述べると、「ダイナミックシステム」とは、人間の知性や脳、天候や組織などの絶えず変化し続ける複雑なシステムのことを指す。

一方、「ダイナミカルシステム」はより専門的な意味を持ち、時間の経過に応じて変化するシステムの状態を記述する数学的な方程式のことを指す。発達心理学にダイナミックシステム理論を適用する場合、知性や能力を動的なシステムと見立て、その状態変化を記述する際に、微分方程式や差分方程式が用いられる。そうした微分方程式や差分方程式がまさに「ダイナミカルシステム」なのである。

こうした差異を意識しながらも、このウェブサイトで掲載するブログ記事では数式表現をできるだけ避けたいと思うので、基本的には「ダイナミックシステム」という用語を多く用いることになると思う。

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