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193. フローニンゲン大学での修錬:一年目のプログラム内容(その2)

June 6, 2016

記事192に引き続き、残り4つの履修科目のうち2つを取り上げて、その内容について簡単に紹介したい。

 

3. 知性・能力の発達とモチベーション

 

元ハーバード大学教育大学院教授カート・フィッシャーを含め、様々な研究者が実証研究を通じて明らかにしているように、人間の知性・能力の発達において感情的な要素は大きな鍵を握る。とりわけ、「モチベーション」と呼ばれる感情の質いかんによって、成長・発達の速度や形は大きく左右される。

 

正直なところ、何かの分野において非常に卓越した能力を発揮している人たちは、もはや「モチベーション」という言葉では包摂しきれない感情に突き動かされて日々の実践活動に励んでいると思う。そうした感情は、モチベーションを超えた異質の感情にすら映る。

 

猟奇的、もしくは、狂気的とも呼べるような感情である。いずれにせよ、卓越した知性や能力を育んでいる人の中には、熱情的な質を伴った感情が渦巻いている気がしてならない。このクラスを履修しようと考えた理由は、そうした凄烈たる感情をより深く理解したいと思ったからである。

 

このクラスを通じて、モチベーションに関する様々な概念、理論、先行研究、実践方法に関する知識を体系的に習得していきたい。特に、発達支援者(コーチ、教師、セラピスト、コンサルタントなど)は、実践者のモチベーションをどのようにサポートすれば、彼らが卓越に至る道程を確固たる足取りで進んでいくことができるのか?どのような要因が学習やパフォーマンスを促進、あるいは阻害することになるのか?

 

それらの問いを中心に人間の感情について探究しつつ、実践者のモチベーションを支援し、それらを育むような芸を獲得・錬磨していきたいと思う。

 

私たちは感情を不可避に持つ生き物であり、いかなる分野の人たちにおいても感情とうまく向き合う必要性があるだろう。感情生活を豊かにすることは、実践者としての深み、はたまた人間としての深みに到達する上で必須なことだと思うのだ。

 

4. 創造性発達と組織のイノベーション

 

創造的な活動に従事すること。それは、その人の生命を最も躍動させる営みであると思う。あるいは、その人の魂・内在神・仏性をこの世界に発露させる営みであると言ってもいいだろう。

 

創造的な営みというのは、それくらい深い価値を内包したものだと感じている。企業の人財育成や学校教育においても、各人固有の創造性をどのように育んでいくかは重要な課題なのではないだろうか。

 

このクラスは、私が所属する「タレントディベロップメントと創造性」のプログラムの一つというよりも、「産業組織心理学」のプログラムの一つに組み込まれている。私の最初のキャリアは経営コンサルタントだったということもあり、また現在も日本企業と関わる機会も多いため、このクラスの内容は私の実務・実践と一番強く結びついているかもしれない。

 

組織の生存においてイノベーションが重要であるということは、これまで長らく叫ばれ続けている。しかし、それが仇となって、多くの組織は「イノベーション」という煌びやかな言葉にもはや踊らされなくなっているぐらい、革新することに対して疲弊している印象を受ける。

 

そのような疲弊した状況を改善することが第一だと思うが、逆説的にもあえて個人と組織の創造性を体系立てて根気強く涵養していくことが、疲弊感を払拭することにつながる気がしている。その理由は冒頭で述べたように、創造性というのはそもそも生命体を躍動させる根源であり、創造性を刺激し、育んでいくことは、個人と組織の生命に活力を与えることにつながると考えているからだ。

 

私は組織のイノベーションについて造詣は深くないが、創造性に関する既存のアプローチはどれだけ包括的・統合的なものなのか疑問に思うことがある。イノベーションを育む組織文化の醸成や制度設計は極めて重要であるという認識のもと、それら集合の内面領域(文化など)と集合の外面領域(制度など)に関する知見や実践技法は洗練されているのかもしれないが、発達理論や学習理論に関する知見や実践技法はどれほど活用されているのか気になるところである。

 

研究者として、このクラスを通じて創造性をどのように測定・評価することができるのかに関心があるが、実践者としては、自分の専門領域である発達理論や学習理論とイノベーションに関する既存の理論を絡めながら、組織のイノベーションを醸成する包括的・統合的なアプローチを模索していきたいと思う。

 

このクラスのシラバスに掲げられているように、創造性やイノベーションはとかく神秘的なものと見なされがちであるが、そうした思い込みに対して実証研究や科学的な理論の光を当てることによって「脱神秘化」を行っていきたい。創造性やイノベーションを脱神秘化すること、それが現代の個人や組織の疲弊感を払拭する一つの活路になるのでは、という思いを持ってこのクラスで学びを深めていきたい。

 

最後に、このクラスにおける私の学習目標を列挙しておきたい。

 

・創造性やイノベーションに関する研究を進めていくための方法論を学び、その利点と限界を理解すること

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・「知性・能力の発達とモチベーション」のクラスと関連付け、創造性やイノベーションと感情の関係について理解を深め、人財育成や組織開発に有益な実践知を獲得すること

・創造性に関する最新の認知プロセス研究を精査すること

・発達理論や学習理論の観点のみならず、組織行動論の観点からも理論や実践を組み立てられるようにすること

・実証的な研究と理論に裏打ちされた「創造性涵養・イノベーション支援プログラム」を構築していくこと

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