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182. 読者の方から寄せられた質問事項(No.6):発達段階5を超えた世界〜ポスト・ポストモダニズムへの視点


拙書 『なぜ部下とうまくいかないのか:「自他変革」の発達心理学』について、新たに頂いたご質問を紹介したいと思います。今回のご質問は、発達段階5を超えた世界に関するものであり、この論点は他の読者の方も関心を持っておられるのではないでしょうか?

質問:発達段階3がプレモダンに、発達段階4がモダンに、そして発達段階5がポストモダンに対応しているかと思います。構造主義発達心理学が構造主義的であることを自認しているのかどうかは分かりませんが、構造主義心理学は自らを超えていく、つまり、ポスト・ポストモダニズムへの超脱の道を模索しているのでしょうか?具体的には、発達段階5を超えるような段階を想定しているのでしょうか?

回答:結論から述べると、様々な構造主義的発達心理学者が段階5を超えるような発達段階を提唱しています。以前、キーガンに話を伺ったところ、キーガンも発達段階6を想定していると述べていました。

ただし、発達段階6に到達している人を発見するのは非常に困難であり、サンプル数が少なくないというのが悩みの種です。その結果、発達段階6の特性を説明しようとすると、どうしても推測的な記述に陥りがちです。

現存する著名な構造主義的発達心理学者の中で、成人以降の高度な発達段階を探究している研究者は10名ぐらいしかいないと思いますが、キーガンに師事をしていたスザンヌ・クック=グロイターは優れた研究成果を報告しています。彼女は、発達段階5、5/6、6の特性を明らかにし、その研究成果をまとめた論文を参考のために添付させていただきます。

発達段階5を超える高次の発達段階を探究している研究者の中で、観点が面白いのは、ハーバード大学医学部のマイケル・コモンズです。コモンズの段階モデルは、キーガンの段階モデルが扱う発達領域と少し異なり、自己意識の発達というよりも純粋に認知的発達(どれだけ複雑・抽象的な思考ができるか)を扱っています。

キーガンの段階モデルと対応させる形でコモンズの段階モデルを説明すると、発達段階5に該当する段階では、多様なシステムを俯瞰的に捉え、それらを統合する新たなシステムを構築できる、というようなメタシステム的な思考ができるとされています。

そして、発達段階6に該当する段階では、多様なシステムや複数のメタシステムがそもそも何に立脚しているのかを掴むことができる、というようなパラダイム的な思考ができると想定されています。最後に、発達段階7に相当する段階では、複数のパラダイムを比較検討することができる、というようなパラダイム横断的な思考ができるとされています。

ダーウィンやアインシュタインのように高度な認知的発達を遂げた人物であっても、上記のコモンズの段階モデルでは段階5から段階6の間に落ち着きます。また、私がマサチューセッツのLecticaに在籍していた時に調査対象となっていたCIAやFBIの捜査官の中で、最も高度な知性を発揮している人でも段階5を少し超えているぐらいのレベルでした。

そう考えると、上記のモデルはかなり推論的であり、あまり実用性がないかもしれません。

参考文献

- Cook-Greuter, S. (2005). Ego development: Nine levels of increasing embrace.

- Commons, M. (2008). Introduction to the model of hierarchical complexity and its relationship to postformal action.

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