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170.学んでも成長しない人に共通する「誇示的学習(conspicuous learning)」

March 31, 2016

ふとしたことから立ち寄った神保町の古書店で、アメリカの経済学者かつ社会学者であるソースティン・ヴェブレンの処女作 "The Theory of the Leisure Class(1899:邦訳「有閑階級の理論」) ” を購入した。

 

本書を読み進める中で、ヴェブレンが興味深い概念をいくつも提出していることを発見した。特に、それは「誇示的消費(conspicuous consumption)」と呼ばれるものだ。誇示的消費とは、簡単に説明すると、自分の経済力を他者に見せびらかせるために金銭を消費することを言う。

 

ソーシャルメディアで流れる情報を見ていると、誇示的消費と密接に関係したものが多いことに気づく。購入したブランド品などをフェイスブック上で紹介するというのもまさに誇示的消費の一例だろう。さらに、優雅な海外旅行の写真を紹介するというのも、誇示的消費(厳密には、ヴェブレンはこれを「誇示的余暇(conspicuous leisure)」と名付けている)の一例だろう。

 

ヴェブレンの書籍を読みながら、ふと思い当たったことがある。それは、多くのことを学ぼうとしているのだが、一向に伸びない人に共通しているのは、学習という行為が「誇示的学習(conspicuous learning)」に成り果ててしまっているからではないだろうか、ということだ。「誇示的学習」というのは私の造語であるが、同じ学習をしても、どうも成長しない人に共通の性質なのではないかと思うに至った。

 

これまで4年間ほど、オンラインで発達理論を学習できるゼミナールを提供させていただいている。多くの受講生を見てきたが、同じ学習コンテンツなのに、ゼミナールの終了後、学習内容がしっかりと身についている人とそうでない人の差があまりに歴然としているのだ。

 

当然ながら、講師としての私の力量が不十分であることは紛れもない事実だろう。しかし、受講生の学びに対する態度にのみ議論の焦点を絞った場合、全く伸びない人に共通しているのは、学習するという行為が「誇示的学習」になってしまっているということだ。

 

つまり、ゼミナールを受講することで、そこで提供される情報を血肉化させることなく、一時的に情報を浴びることで満足してしまっているのだ。より具体的には、日本ではほとんど知られていない成人以降の知性発達理論という「希少性の高い財」に触れるだけで満足感を得ている人は、学習内容が全く身につかないのだ。

 

この構図は、超越的な意識状態を体験することに重きが置かれがちな、トランスパーソナル心理学のコミュニティにも見受けられる。「意識状態」というのは、永続的なものではなく、感情状態のように変化が激しく、仮のもの、一時的なものである。一方、構造的発達心理学が扱う「意識段階」というのは、一時的なものではなく、恒常的なものである。

 

トランスパーソナルコミュニティが、日常では経験できない(希少性の高い)意識状態を体験することに邁進する様子と、日本ではまだ馴染みのない成人以降の知性発達理論の知識に触れることだけで満足感を得てしまう様子は、どちらも共に、根元部分には誇示的消費と関係する人間の経済的な欲望が渦巻いている気がするのだ。

 

どうやら「カネ」と呼ばれるものは、我々が具合的な物を獲得することのみならず、抽象的な情報を獲得することにも多大な影響を与えているようである。誇示的学習をいくら数多くこなしたところで、質的・構造的な成長など起こりようがないため、私たちは一度、自らの学習との向かい方を省察するべきだろう。

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