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153. 社会的・感情的発達と認知的発達の関係性


発達心理学者のオットー・ラスキーは、ロバート・キーガンの発達理論を「社会的・感情的発達理論」と命名し、マイケル・バサチーズの発達理論を「認知的発達理論」と命名しています。私がラスキーの下で学習していた時、彼は、両者の理論は異なる発達領域について扱っていると頻繁に述べていました。

社会的・感情的発達というのは、私たちが自分自身や他者(社会も含む)をどのように認識しているのかを表し、特に自分の感情と向き合うための器の発達を指します。別の表現をすれば、社会生活を営む際に発揮する自己認識能力や他者認識能力の発達を扱うのが、社会的・感情的発達領域です。

一方、マイケル・バサチーズが探求していた認知的発達領域は、純粋に物事を思考する力を扱います。抽象的な概念や理論をどれだけ巧みに操作し、それを言語で表現できるのかを探求するのが、ここで言う認知的発達領域です。

それでは、これら二つの発達領域はどのような関係になっているのでしょうか?それを考える際に鍵を握るのは、「認知的発達は他の知性領域の発達に必要であるが、十分ではない」というケン・ウィルバーの指摘です。

つまり、何らかの対象を純粋に思考する力は、他の知性領域の発達にとって必要条件であるが、思考力がありさえすれば他の領域の発達が促されるわけではないということです。

これに基づいて考えてみると、社会的・感情的発達と認知的発達の関係性が見えてくるのではないでしょうか。社会的・感情的発達領域は、社会生活の中で発揮する自己認識力や他者認識力を扱うという性質上、そこには必ず意味を生成する力が関わってきます。

すなわち、自分を認識する際には必ず自分の感情や存在に対して独自の意味づけを行っており、他者を認識する際にも同様の意味づけを行っているため、社会的・感情的発達領域には意味を生成する力が不可欠となってきます。まさに、キーガンが「人間は意味を構築する生き物である」と述べているように、社会的・感情的発達領域と意味構築能力は密接に関わっているのです。

ただし、意味を構築する力の土台にあるのは、概念を操作する力を扱う認知的発達領域です。なぜなら、私たちは概念なしでは意味など構築することができないからです。

このように考えてみると、認知的発達は社会的・感情的発達の土台に該当するものであり、そうした基礎基盤の発達が不十分であると社会的・感情的発達は促されない可能性があります。

ラスキーも指摘しているように、社会的・感情的発達が認知的発達にもたらす直接的な影響はほとんどないが、認知的発達は社会的・感情的発達に強い影響をもたらすというのは妥当性が高いと言えるでしょう。ただし、まだ十分な実証結果が出ていないので、こうした相互の影響性について断定はできないという注意点があります。

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