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136. 絶えず乱高下する成長・発達プロセス

July 30, 2015

記事「134. ダイナミック・スキル理論誕生史:デカルト的認識論を超えて」では、カート・フィッシャーが提示した示唆深いメタファー「発達の網の目構造」について紹介しました。

 

今回の記事は、カート・フィッシャーのダイナミック・スキル理論に含まれる別の重要な考え方を紹介していきます。それは、「発達というプロセスは必然的に退行や停滞を含む非線形的なものである」ということです。

 

一般的に、既存の発達理論は、発達を階段状あるいは梯子のようなイメージで捉えており、それらの発想の下では、発達が直線的なプロセスとみなされる傾向にあります。そのため、「発達とは常に上昇を辿るプロセスである」という幻想を私たちに抱かせることになります。

 

しかし、ダイナミック・スキル理論を用いた近年の研究結果が明らかにしているのは、心の発達というのは直線的なプロセスではなく、乱高下を前提とした紆余曲折するプロセスだということです。既存の発達理論がある意味「上昇志向的」な発想に支えられていたのとは対照的に、ダイナミック・スキル理論においては、発達が不可避的に内包する「上昇」と「下降」という対極性が見事に統合されているのです。

 

ここで注意が必要なのは、私たちが具体的な文脈において発揮しているスキルは、際限なく乱高下しているわけではなく、ある一定の幅の範囲内で乱高下をしているということです。この現象を説明する際に鍵を握るのが、「最適レベル」と「機能レベル」という概念です。

 

「最適レベル」(optimal level)とは、他者や環境からのサポートを得ることによって発揮できる最も高度なスキルレベルのことです。一方、「機能レベル」(functional level)とは、他者や環境からの支援なしに発揮することができる最も高度なスキルレベルのことです。

 

カート・フィッシャーは、両者のスキルレベルの間に存在する溝(ギャップ)のことを「発達範囲」(developmental range)と呼んでいます。私たちのスキルは、与えられたタスクの種類や置かれている文脈に応じて、乱高下をしながら動的に変化していきます。つまり、わたしたちのスキルは、最適レベルと機能レベルの間――発達範囲――の中で発揮されるのです。

 

これまでのところ、ダイナミック・スキル理論の概略、誕生背景、そしてその代表的な重要概念について紹介してきました。次回の記事では、ダイナミック・スキル理論がどのように企業社会や教育の世界に活用されているのかを簡単に見ていきたいと思います。

 

【追記:芸術体験としての読書】

 

ここ最近、書物との向き合い方について模索しています。

 

私は書物を読みながら、基本的には思いついた考えやイメージなどをその書物に書き込むということをしていたのですが、どうもこれだけだと読書体験に深みがもたらされないと感じています。確かに、漠然と書物を読むという行為とは違い、考えやイメージを書き残すことによって一段深い読書体験につながっていると思います。

 

しかし、どうもそれだけでも不十分である気がしています。実際に、読書体験が終わった後に、どうも肚に引っかかりがある感覚、何やら咀嚼不良・消化不良のような身体感覚に包まれることが頻繁にあります。

 

その打開策として、アイデアが飛躍していますが、読書という体験をある種の芸術体験に昇華させられないかと考えています。

 

井筒俊彦先生が指摘しているように、言語は幻覚剤のようなものであるため、書物を読むという行為の最中に活字情報から生み出される色や音などを含め、それらを書物に書き残していくと、読書を通じて絵画制作や音楽制作と似たような体験をすることが可能になるのではないかと。

 

活字情報を無味乾燥な活字情報として記憶にとどめることの限界を最近感じているため、上記の絵画的・音楽的読書法を実践していこうとふと思いました。どのような具象画・抽象画が眼前に立ち現われ、どのような交響曲が聴こえてくるでしょうか。

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