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112. 新ピアジェ派が継承する五つの発達思想


新ピアジェ派はこの25年間にわたって、古典的なピアジェ理論の本質的な側面を保持すること、さらに探求が必要な箇所を発展させること、最新の実証研究に基づいてピアジェ理論の改定をおこなうことに力を注いできました。

以前私のメンターであったセオ・ドーソンから聞いた話なのですが、カート・フィッシャーとロビー・ケースは良き共同研究者でありながら、お互いを建設的に批判し合っているという話を聞きました。

実際のところ、新ピアジェ派と呼ばれる研究者は、以前紹介したように、カート・フィッシャーやロビー・ケースをはじめとして、ジュアン・パスカル、グレーム・ハルフォード、マイケル・コモンズなど多数存在し、お互いに共通の見解を持ちながらも、異なる発達思想を持っている場合がほとんどなのです。

それでは、新ピアジェ派は、具体的にどのような合意事項を共有しているのでしょうか?共有されている合意事項は、大きく分けて5つあります。一つ目は、ピアジェの考え方を踏襲し、新ピアジェ派は認知的構造主義者であるということです。言い換えると、彼らの焦点は、ピアジェで言うところの「スキーム」や「段階」という認知の構造的な質的差異にあると言えます。

二点目として、新ピアジェ派は、認知構造は学習者によって能動的に構築されるものであると信奉しています。学習者は、単に情報を蓄える受動的な機械ではなく、能動的に知識を構築・確立する存在なのです。それゆえに、学習者の認知構造の発達は、知識や経験の能動的な構築によって生み出されるとしています。

三点目として、新ピアジェ派は、認知構造は年齢的な成熟や学習・経験によって徐々に複雑なものになっていくと説明しています。つまり、年齢に加え、知識や経験を少しずつ構築していくことによって、質的に異なる高次元の発達段階を獲得していくとしています。

四点目として、新ピアジェ派は、より高度かつ複雑な認知構造は、以前の発達構造の上に構築されると主張しています。これは、アメリカの思想家ケン・ウィルバーの「含んで超える」という発達思想と同様のものだと言えます。それに加え、興味深いことに、新ピアジェ派は「新しい認知構造は、以前の発達構造を変容させる」ということも述べています。

これはあまり知られていない点だと思いますが、新たに構築される高度な認知構造は、単純に以前の段階を含んで超えるだけではなく、以前の発達段階の特性を変容させる働きを持っているのです。

五点目として、新ピアジェ派は、認知構造の発達過程は普遍的なものであると述べています。喩えて言うならば、個人によって様々な発達の道を歩んで行くのですが、様々な道が合流する地点は同じような景色を持つということです。さらに、それらの発達過程は、年齢によって全てが決定されるわけではないが、時の経過と関係し合いながら進んでいくものであると指摘しています。

今回の記事は、新ピアジェ派が受け継いでいるピアジェの思想について紹介しました。次回の記事は、新ピアジェ派がピアジェ理論を具体的にどのような点において発展させたのかを紹介したいと思います。

【追記】:新ピアジェ派には様々な研究者が存在し、上記で見てきたように、主軸となる思想を共有しているというのは確かです。しかし、三点目で指摘した「構造的な質的差異」に関して、研究者によってその判断基準がかなり異なります。より厳密に述べると、研究者によってかなり異なる判断基準で質的差異を明らかにしている場合もあれば、判断基準が実に微妙に異なっている場合もあります。

その結果として、一見同じように思える段階表記が若干異なっているというケースが多々あり、それが発達理論学習者泣かせになっていると個人的に思います。しかしながら、そうした端から見ると微妙な違いの中に、その研究者独自の視点や貢献が隠されていたりするので、宝物のような発見はそうした比較研究の中に潜んでいるとも言えますし、発達理論探求の醍醐味はそうした所に存在するとも言えます。

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