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60. 現代発達理論を呪縛する4つの誤謬思想


刻一刻と変動するリアリティの中で、私たちの活動は多様性と可変性に満ち溢れています。もしそうした人間の活動が、線形的な手法で測定されることがあれば、線形的な変化以外の何者も明らかにならないでしょう。

こうしたアプローチは長らく発達研究のフィールドに存在しており、それは人間の活動を一つの次元に押しとどめる力を持っていました。仮に人間の活動を多面的・多次元的に捉えるアプローチが採用されるならば、人間の精神活動が持つ多様な側面を明らかにしてくれるでしょう。

カート・フィッシャーが指摘するように、人間の精神活動を線形的な一つの次元に押しとどめるアプローチは、人間が織り成す動的な活動を探求する足かせとなります。より具体的に、フィッシャーは、現代発達理論を呪縛する4つの誤謬思想の存在を指摘しています。

1. 「単一的な発達レベル・単一的なスキル」:一つ目の誤謬は、ある瞬間において、私たちは単一の認知構造に基づいて機能し、単一的なスキルを持つという考え方です。この考え方に反して、実際には、私たちは仮に同じ状況下に置かれたとしても、複数の発達レベルを発揮し、多様なレベルのスキルを発動させながら生きています。

さらに、発達の網の目構造で見られるように、私たちは種々様々な発達領域を行き来し、それらを結びつけながら発達していきます。そのため、現代の測定手法は、多様な発達領域における複雑なプロセスを捉え、文脈に応じて変化する発達レベルとスキルレベルを適切に測定することが求められています。

2. 「単一的な発達の形(プロセス)」:二つ目の誤謬は、発達のプロセスを線形的あるいは決まりきった一つの形とみなしてしまう考え方です。しかし、実際には、これまで見てきたように、発達の形は実に多種多様です。

往々にして、二つ目の誤謬は、発達を後戻りできない線形的なプロセスとみなしてしまいます。しかしながら、カート・フィッシャーを含めて、多くの研究者が明らかにしているように、発達プロセスは非線形的であり、さらに後退現象も伴います。

マクロな視点を取れば、次の発達段階に到達するという発達的な跳躍を遂げた直後に、発達的な後退現象が見られます。またミクロな視点を取ると、新しいスキルを獲得する直前に、スキルレベルが一時的に後退するという現象が見られます。

3. 「単独で存在する個人」:三つ目の誤謬は、私たちは単独で何かを学習し、発達していくという考え方です。この考え方に反して、私たちは通常単独で活動しているわけではなく、それどころか、誕生の瞬間から他者をパートナーとして、社会生活を営むことをある意味宿命づけられています。

そのため、多様な文脈の中で共にリアリティを構築し合う他者を含めて研究対象とすることは、より現実的であるばかりか、人間の発達プロセスをより鮮明にしてくれます。

4. 「単一的な文脈」:最後の誤謬は、単一の文脈あるいは一つのタスクに絞って発達測定をおこなってしまうことです。この考え方に反し、より正確な発達測定をおこなうためには、複数のタスクと多様な文脈を織り込む必要があります。

複数のタスクと多様な文脈を発達測定に組み込んで初めて、複数の発達レベルや多様な発達プロセスが明らかになります。つまり、人間が持つ動的な側面および可変的なスキルレベルを明らかにするためには、様々な条件設定とそれら複数の状況における多様なタスクを組み込んだ測定をおこなう必要があります。

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