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54. 新生得主義の誕生とその限界点


発達現象の可変性が認められるにつれて、発達理論のフィールドの中に新しい思想立場が生まれました。それは、「新生得主義」と言われるものです。新生得主義も発達構造を静的なものとみなすパラダイムの傘下に置かれているのですが、既存の段階モデルに代替する理論的枠組みとして一時期注目されていました。

新生得主義を信奉する研究者は、人間の発達に関する優れた研究を数多く残しており、以前の記事で紹介したデカルト的発達思想に縛られた生得論と経験論を融合させることに成功しました。この融合的な発達思想は、形式的な論理に基づいた構造モデルを拒絶し、代替案として、内在的な発達の規則を提唱するに至りました。

しかしながら、内在的な発達の規則には、形式的な論理に基づいた構造思想と同様の限界が内包されていました。それは、発達構造を静的なものとみなすことであり、人間の動的な活動から生み出される可変性を説明できないことでした。

新生得主義の研究者は、人間の心が持つ可変性の一部に焦点を当て、数字、空間、言語などの領域に存在する内在的な能力の存在を証明しようとしました。こうした潮流の代表者は、言語学者のノーム・チョムスキーです。

チョムスキーは特に、言語の中に可変性が存在することを拒絶し、言語の可変性は幻想ですらあると主張し、全ての人間は根本的に同じ言語を話していると述べています。しかし、内在的な言語規則に焦点を当てているチョムスキー派の理論が提唱していることの多くは、実証的に何ら証明されていないのです。

言語の研究に関して言えば、生得主義・新生得主義のアプローチは、言語が持つ多様性を説明することができていないことに加え、様々な文脈において変化する言語の可変性も説明することができていないというのが現状です。 質問・コメント・記事の共有をご自由にしていただければ幸いです。

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