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30. スキル向上過程に起こる興味深い現象:かりそめの発達と強固なスキル獲得への道


カート・フィッシャーがこれまでにおこなった研究の中で、一つとても興味深い研究があります。それは、学習・発達支援者の介入が、学習者のミクロな発達(秒、分、時間レベルの発達)にどのような影響を及ぼすかという研究です。

以前紹介したように、私たちのスキルの発達は向上と後退を繰り返す、非常にダイナミックなプロセスです。スキルの発達過程は非常に複雑でありながら、向上と後退を繰り返すため、ある意味、不安定なプロセスと見ることもできます。そうしたある種の不安定なプロセスにおいて、適切な学習・発達支援をおこなうことは、さらに高度な安定的な段階に到達するために重要となります。

カート・フィッシャーは、学習・発達支援者の介入の度合いに応じて、学習者のスキルがどのような軌道を描きながら発達していくのかを研究しました。この研究の結論部分を先に述べると、学習・発達支援者の介入があった直後に、学習者は高いスキルレベルを発揮し、支援がなくなった直後、急激にスキルレベルが低下するということを発見しました。

発達の網の目構造という概念を紹介した際に、発達過程は各人様々であるため、発達支援が、その人のスキルレベルにどれだけの影響を及ぼすかは異なるということを述べました。しかし、どの学習者においても、介入的な支援を得た直後には高いスキルレベルを示し、支援を失った直後には低いスキルレベルを発揮するという現象は共通しています。

これは、秒・分・時間単位のミクロな視点であり、より大きな時間軸で発達現象を眺めてみると、さらに興味深い事実を得ることができます。継続的な学習・発達支援をおこなうと、学習者は向上と退行を繰り返しながらも、ある時突然、高次元のレベルに到達し、他者からの支援がなくてもそのレベルを安定的に維持できるようになります。

つまり、他者からの支援を受けながら、度重なる向上・退行プロセスを通過すると、ある時、これまで他者からの支援なしでは発揮できなったスキルの基盤が強固になり、支援を得ることなくその高次元のスキルを発揮することができるようになります。カート・フィッシャーは、ダイナミックスキル理論の枠組みを用いながら、こうした発達現象を明らかにしました。

発達を促進する近道など存在せず、発達と退行は、常に隣り合わせの対極的な現象であるということをきちんと認識しておくことが重要です。そのような認識がなければ、私たちは、かりそめの発達向上現象に目を奪われてしまい、真に深みのある高度なスキルを獲得することができなくなってしまうでしょう。 質問・コメント・記事の共有をご自由にしていただければ幸いです。

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