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15. 発達が内包する不安定性と退行への配慮:線形的発達思想を超えて


カート・フィッシャーのダイナミックスキル理論において、発達が持つ可変的な要素や多様な発達の形(発達の網の目構造)についてこれまで紹介してきました。それらに加えて、もう一つ、ダイナミックスキル理論が強調している大切な点があります。それは、発達が内包する不安定性と退行という現象です。

一般的に、既存の発達理論の多くは、発達を階段状あるいは梯子のようなイメージで捉えているということを以前に紹介しました。それらの思想の下では、どうしても発達が直線的なプロセスとみなされがちであり、常に上昇を辿るプロセスであるという幻想を私たちに抱かせがちです。

過去の研究に対して、ダイナミックシステム理論やダイナミックスキル理論を用いた近年の研究が明らかにしているのは、心の発達というのは直線的なプロセスではなく、乱高下と退行を前提とした紆余曲折するプロセスだということです。

既存の発達理論がある意味「上昇志向的」な発想に支えられていたのとは対照的に、ダイナミックシステム理論やダイナミックスキル理論においては、発達が内包する「上昇」と「下降」という対極性を見事に統合していると言えます。

「ダイナミックスキル理論とモンテッソーリ教育」を紹介したビデオの中でも言及されている通り、発達は乱高下するプロセスであり、退行という現象は異常なものではありません。私自身の教師としての経験を振り返ってみても、生徒が一週間前に理解できていた内容が、今日理解できなくなっているというのは頻繁に起こります。

言い換えると、教師の支援の下で発揮できていた高次元のスキルが、時間が経つと自らの力で発揮できなくなってしまうということは日常茶飯事です。特に数日・数週間単位のミクロな発達においては、多くの研究結果が明らかにしているように、退行と上昇を繰り返す動的な動きが見られます(メソな発達、マクロな発達においても同様の現象が見られますが、若干その動きが異なります)。

「私たちの心の構造が生み出すスキルの発達は退行を前提として乱高下するものである」ということを念頭に入れ、現在のスキルレベルの基盤を強固にし、次のスキルレベルに到達するためには、発達が内包する非線形的かつ動的な動きに配慮した教育・学習プログラムおよび適切な指導者・支援者の存在が不可欠だと思います。

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