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14. 文脈特定的かつ文化的に規定されているスキル


ダイナミックスキル理論で想定されているスキルについて、その大きな特徴をこれまでの記事で説明してきました。一言でその特徴を述べるならば、私たちが発揮するスキルというのは非常に動的なものであるということです。今回の記事では、心の構造が生み出すスキルが持つ他の重要な側面について解説したいと思います。

スキルは動的であるという以外に、文脈特定的であり、文化に規定されているという特徴が大切です。私たちの思考や行動というのは、ある特定の状況の中で機能するように組織化されます。

そのため、一流のサッカー選手がそのまま一流の野球選手になることは考えにくく、ある国(文化)で受け入れられている一流の作家が他の国(文化)でも同様の評価を自動的に得られるわけではありません。

スキルが文脈特定的であるというのは、前回の記事で紹介した心の構造が持つ「統合」と「相互関与」という性質と密接に関わっています。私たちは、ある社会や文化の枠組みが生み出す特定の文脈の中で、他者と協働(相互関与)するためにスキルを構築しています。

そして私たちは、多様な文脈に参画することによって、スキルを構築し、そうしたスキルを内面に取り入れ始めます。その結果として、多様な文脈を通じて構築されるスキルは、文化的な色彩を帯びてきます。

同様に、私たちの記憶・知覚・感情、あるいは生理的な統制機能さえも、文化的に規定されるとフィッシャーは指摘しています。私自身の経験を振り返ってみると、英語という言語空間が築き上げる文脈で発揮する知覚パターンや感情パターンと、日本語という言語空間が持つ文脈で発揮するそれらのパターンとは異なることを確かに実感しています。

そのため、私たちが持つ文脈特定的なスキルというのは、単に環境に適応するという以上の意味を内包していると考えられます。

知覚や記憶というシステムは、しばしば社会文化的なシステムと切り離されて考えられがちですが、それらは社会的・文化的な枠組みと密接に関係し合っています。そのため、それらのシステムを含め、私たちのスキルは、単に環境に適応するというよりも、社会的・文化的な枠組みと相互に影響を与える形で存在していると言えます。

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